「翼を授ける~」海に向かって羽ばたけ 「レッドブル」イベントの原点は、昭和バラエティー「びっくり日本新記録」か、かつての「鳥人間コンテスト」か?
「Red Bull Flight Day 2024」が5月26日の日曜日、神戸ハーバーランドの高浜岸壁(モザイク前)で開催されました。日本では2回目、9年ぶりの開催。2万1千人(主催者発表)の観客で盛り上がりました。
■そもそもRed Bull Flight Dayって?
1992年にオーストリアのウィーンで開催され、世界各地で180回以上も行われてきましたRed Bull Flight Dayは「動力を持たない手作りの人力飛行機によるショー型コンテスト」。飛行距離、機体デザインのクリエイティビティ、フライト前にプラットホームで行う40秒のパフォーマンスなどが審査対象です。ゆりやんレトリィバァさん、呂布カルマさん、高梨沙羅さん、小林陵侑さん、赤星憲広さんという豪華な5人がジャッジしました。
■次々にフライトする個性溢れる機体たち
海に張り出した、プラットフォームは水面までの高さが7.5メートル。最初のフライトは「お米たべてー!」チームのRice Ball号。機体が三角おにぎり、翼が竹の皮、お箸の胴の先にたくあんの垂直尾翼とお手ふきの水平尾翼が付いているという、お米愛に溢れたチームです。これまたお米愛満載のパフォーマンスの後、フライト、というかダイブ、かなあ。パイロットはすーっと綺麗に落下。飛行距離4.7メートル、機体のクリエイティビティは36点、そしてパフォーマンスは36点。合計76.7ポイントと、しょっぱなから好記録です。
このイベント。飛距離を競うことは競うのですが、そのウエイトは大きくなく、機体の奇抜な発想と面白いパフォーマンスが得点を分けるんですね。
35チームが参加。どんどんフライトいや落下・着水は続きます。3組目はなんと、富士山。富士着五号と名付けられたその機体には翼はなく、もはや飛ぶ気は一切感じられません。そうです、飛ぶ前に大勝負をかけているのです、このチームは。
アニメ「風の谷のナウシカ」に出てきたガンシップを段ボールで再現した機体、ダイビングヘッドをするサッカー選手の機体、姫路城の機体、みーんな楽しくパフォーマンスして海に飛び込みます。
精鋭たちが集う中、優勝は秋田からやって来たチーム「んだんだ」の「復活のNAMAHAGE」号。今大会最長の15.6メートルを飛び、クリエイティビティとパフォーマンスでも他を圧倒しました。
また、漫才コンビ・ジャルジャルさんは「夢の無い大学生の夢を叶える」という設定で飛んで、会場を盛り上げていました。
■Red Bull Flight Dayと「鳥人間コンテスト」
自作飛行機で水面に向かって飛ぶというと、日本では「鳥人間コンテスト」(第1回は1977年)が頭に浮かびます。強豪チームは回を重ねるごとに機体の完成度を高めて、人力プロペラ機部門ではもはや当たり前のように琵琶湖を往復します。
このコンテスト、元々読売テレビの「びっくり日本新記録」(1975年~1985年)の中の企画でした。この番組はコミカルな自作のそりでゲレンデを滑ったり、船で水面を渡ったりというバラエティで、第1回の鳥人間もコミカルなネタのような機体が多く、Red Bull Flight Dayに近い雰囲気があったのです。
一方で、最初からガチで距離をたたき出す人も多く、第1回目の優勝者は82.44メートルを飛んでいます。その後順調に距離を伸ばし、第4回目には100メートルを超えました。そして2022年の第44回大会では滑空機部門で533.58メートル。10メートルの高さからの飛び出しで信じられない記録が出ています。ちなみにRed Bull Flight Dayは歴代最高記録が70メートル台です。
鳥人間も第2回から10回までは、飛距離を競わない独立したコミックエントリー部門がありました。昭和の終わり頃ですが、プラットホーム上で自己PRをしたあと「わーっ!」と琵琶湖に飛び込む様は、筆者も当時テレビで見て大笑いしていました。今回、Red Bull Flight Dayを観戦してあの頃を思い出しました。
航空力学を究めて、一年かけて機体を製作し、脚力を鍛えて記録に挑む鳥人間。一方で、ぶっ飛んだアイデアを競って思いっきりはっちゃけて楽しむRed Bull Flight Day。方向性が全く真逆な両イベントですが、どちらも素晴らしいと思います。また次回開催される折には、ぜひ皆さん足を運んでみてください。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)