保護団体を巣立つきょうだい 「私にはお迎えが来ないのかな」心優しい保護犬は人間がいるとガチガチに 一番最後に届いた運命の朗報
2023年5月、保護団体・アニマルフォスターペアレンツ(以下、アニマルフォスター)に生後1カ月半ほどのモコモコの子犬5きょうだいが保護されました。毛並み・毛色は違えど仲良しで、当初は緊張してみんなで固まって過ごしていました。
共通するのは怖がりな性格でしたが、1匹また1匹と「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れ、巣立っていきました。
■穏やかで優しい性格でも人間がいるとガチガチに…
そんな中、きょうだいの中でも最も穏やかで優しいさつきだけは、里親希望者さんとの縁が結ばれぬままでした。
さつきは元野犬らしく他のワンコとの協調性も抜群で、ワンコの前であれば本来の優しい性格を見せてくれる一方、人間が近くにいるとガチガチになってしまいます。
複数回参加した譲渡会でも、多くの来場者を前に伏目がちになってしまうことから「迎え入れたい」という申し出がなかなかなく、「迎え入れたい」という人が現れてもうまくいかず、きょうだいの幸せを見送る日々を送っていました。
スタッフも「こんなに美人で優しく、お利口さんのさつきだけど、どうもその魅力は、里親希望者さんに伝わりにくい」と残念に思っていました。
■トライアル先では遠吠えし拒否反応
保護から4カ月ほどが経った頃、「さつきを迎え入れたい」という里親希望者さんの申し出がありました。実はこの方は当初より、家族全員でさつきを気にかけてくれていた心優しい人。さつきが人前では素直な自分を出せないことも全て承知の上での申し出でした。
果たしてさつきは、この家でトライアルを実施することになりましたが、案の定「私に何をするつもり?」「私はここの家の子じゃない!」と遠吠えしたりと拒否反応。エサを与えても口にしません。
里親希望者さんは諦めませんでした。心を閉ざすさつきに「さつきが私たちを信頼し、我が家を『私のお家』として選んでくれるまでがんばろう」と献身的に接し続けました。
■里親さんの愛情を前にさつきが心を開いた
やがてさつきはトライアル当初のような行動を見せなくなり、表情も柔らかくなりました。優しい里親さん家族からの愛情が伝わり、信頼を寄せることができたのでしょう。後日、正式譲渡の申し出があり、さつきは「ずっとのお家」をつかむことができました。
さつきには人馴れだけでなく、散歩などのトレーニングも必要でしたが、里親さんはさつきのペースに合わせて接し続けました。後には里親さんの前では、尻尾を振りご機嫌な表情を見せてくれるようにもなったそうです。
一番最後に幸せをつかんださつき。時間はかかりましたが、それはこの優しい里親さんと出会うための運命だったのかもしれません。
(まいどなニュース特約・松田 義人)