怯えた目 骨が浮き出た体 老犬は散歩やシャンプーを経験して表情が一変した 日向ぼっこができる不安のない日々を謳歌    

2024年3月、福岡県動物愛護センターにミックスのオスの老犬が収容されました。多頭飼育現場から行き場を失い収容されで、後につけられた名前は「ジロさん」。

毛は汚れ、体は骨と皮でガリガリ。右目の下はけがをしており、後ろ右足が痛いのかうまく地面につけられないようです。ジロさんのことを知った地元のボランティアチーム、わんにゃんレスキュー はぴねす(以下、はぴねす)の代表は保護することを決意。同時に知り合いや懇意の里親さんをあたり、保護後のジロさんの行く先も探しました。

■泣き出しそうな表情

この話を聞いた山口県のNさんは「うちで迎え入れます」と言ってくれました。過去にはぴねすから保護犬を迎えた経験があります。胸をなで下ろした代表は動物愛護センターへジロさんを引き出しに向かいました。

職員に連れられて犬舎から出てきたジロさんは伏し目がちです。明らかに怯え、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていました。まるで「僕は殺されるんでしょうか」「今まで僕は何か悪いことをしたでしょうか」とでも言うように。

そんなジロさんの様子に胸が締め付けられた代表は「大丈夫。今まで怖い思いをさせちゃってごめんね。優しい里親さんが待っているからすぐに行こうね」と話しかけました。そして不安そうなジロさんの体をなでました。

■「僕も自由に歩いていいの?」と何度も見返した

ずっと犬舎の中に入れられたままだったジロさんを連れ、付近を散歩しました。最初は戸惑う表情で、代表のほうを見返すばかりのジロさんでしたが、「大丈夫だよ。一緒に歩こうね!」という代表の励ましに応えるかのように少しずつ歩き出しました。

けがをしているとみられる足は痛そうですが、ジロさんはうれしそうに歩きました。歩きながらも代表のほうを見返します。

「僕こんなふうに散歩してもいいの?」「本当はこんなふうにずっと散歩してみたかったんだ」

そう訴えかけるようなジロさんの瞳に、代表は目頭を熱くしながら、声をかけてあげました。

「大丈夫。これからはいっぱい散歩に連れて行ってくれるよ!」

■シャンプーの後は緊張の糸がほぐれウトウト

Nさんに渡す前に、懇意のペットサロンに寄り、できる限りのシャンプーとトリミングをしてあげることにしました。

長期間全く世話されていなかったせいで毛はフェルト状に固まり、ブラシが全く通らない状態。1時間ほどをかけて少しずつ毛玉を取り続けました。どうしても毛が引っ張られてしまうことがあるため、少々の痛みがあったはずですが、ジロさんは吠える素振りは全くなく、我慢しているようでした。

シャンプーをするとうれしそうな表情を浮かべ、終わった後はウトウト。緊張がほぐれ安心してくれたのか、その寝顔は穏やかでした。

■穏やかに日向ぼっこできる不安のない日々

その晩、Nさんが山口県から福岡県のサロンまで迎えに来てくれました。代表は「ジロさん良かったね。ずっと元気に過ごすんだよ」と幸せの第二の犬生へと送り出しました。

Nさんは迎え入れてすぐに動物病院にジロさんを連れていき、適切な医療ケアをしてもらいました。治療を続けながらNさんの家にいる先住犬と一緒に、ジロさんは穏やかに過ごすようになりました。

お天気の日は外で日向ぼっこするジロさん。その穏やかな様子を見て「本当に良かった。ジロさんうちに来てくれて本当にありがとうね」と喜ぶNさん。そして、当のジロさんもまた穏やかな笑顔でNさんを見つめ返すのでした。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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