突然現れたやせ細った盲目の老猫「よく生きていたね」保護主に見守られて迎えた穏やかな最期
■突然餌場に現れた猫
そうこちゃんは、2017年3月、愛護団体NPO法人ねこけんのメンバー、IWAさんが餌やりをしている現場に「急に現れた」。人に慣れていたので、当初は迷子猫かと思われた。しかし、近隣に訪ね歩いたが、有力な情報はなかったという。
そのうち急に姿が見えなくなり、心配したIWAさんが数日探し回ると、そうこちゃんは、近くの家の庭で見つかった。
「今保護しないと、またいなくなってしまうかもしれない。」
IWAさんはすぐに保護をして病院へ連れて行った。そうこちゃんの目は真っ白で、明らかに異常があった。診察の結果、全盲でエイズ白血病は陰性、腎臓と肝臓の数値が良くないことが分かった。推定14~15歳だったが、体重はわずか2.2kgだった。
「こんな状態でよく生きていたよね。でも、何とか頑張りましょうか」と、IWAさんは家に連れて帰った。
■さよならそうこちゃん
倉庫の下で見つけたので、名前はそうこちゃんにした。他の猫達はすんなり受け入れてくれたという。平和な日々だったが、ある日、そうこちゃんは鼻血が喉から胃に溜まったようで、急に吐血した。
急遽IWAさんが夜間救急で病院へ連れて行ったが、そうこちゃんの体調は思いの外悪く、してあげられることがほとんどなく、IWAさんは看取りを覚悟で家に連れて帰ったという。
その後、鼻血が出ると止血剤で止め、何とか状態を緩和しながら「そうこちゃん」は生き延びた。そして、そうこちゃんに試練が。ぐるぐると回り始め、目には眼振があった。ステロイド治療などをするも、良くなったり悪くなったりを繰り返し、ついに足腰が弱って、立てなくなってしまった。
いつも元気で明るいIWAさんも、さすがに気持ちが沈んだ。
「もうお別れなのかな。倉庫の横にいたから『そうこ』なんて名前を付けないで、『宮殿』とか『豪邸』とか、豪華な名前をつけてあげればよかった。」
膝の上で寝ているそうこちゃんの上には、IWAさんの涙の粒がポロポロと落ちた。
そうこちゃんは、なぜ突然現れたのか。年を取り、盲目のそうこちゃんは、外では生きていけない。
「室内で何ら問題なく過ごしていたので、飼い猫だった可能性も否定できません。そうこは捨てられたんじゃないでしょうか。年をとってお世話が大変になったから?もしくは、飼い主さんが亡くなるとか、施設に入ったとかで外に出されてしまったのかもしれません。猫を捨てたり、置き去りにすることは動物愛護法違反です。」
その後、IWAさんは、そうこちゃんを病院へ連れて行き、長時間留守にしないように、仕事の休憩時間に家に戻ってはオムツを替え、必死でお世話を続けていた。家の玄関を入った時に、「そうこ~生きているか?」と声をかけることが習慣になるほどだった。
やがてそうこちゃんは容態が急変し、みんなが見守る中、眠るように静かに虹の橋を渡ったという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)