道路に塗られた「白い2本線」のナゾ 日本一短い横断歩道だった! 大阪、京都、静岡に存在していた
道幅わずか3メートル前後の狭い道路に、横断歩道の白線が描かれている。しかも歩行者用の信号機もある。こう見えても横断歩道なのだ。リサーチを進めていくと、同様の横断歩道は、京都市下京区と静岡県伊東市にもあることが判明。
このような狭い幅の道路にも、横断歩道と信号機を設置するのは何故か。また、その基準とは? 大阪・京都・静岡の3府県警に聞いた。
■横断歩道のサイズは内閣府令・国土交通省令で定められている
横断歩道といえば、交差点の流出部に描かれた縞々の白線が一般的なイメージだろう。ところが、縞々どころかたった2本しか線が描かれていない、極めて短い横断歩道がある。
大阪府和泉市肥子町(ひこちょう)1丁目にある横断歩道は、全国の珍しい光景を紹介するテレビ番組で、日本一短い横断歩道として紹介されたこともある。赤い看板が目立つドラッグストア付近にあるが、大人なら数歩で渡ってしまえそうだ。
大阪府警察によると「信号機の設置に伴って、交差点の流出部に横断歩道を設置することが原則です」とのこと。つまり、信号機を設置すると、横断歩道も設置することが原則なのだそうだ。
信号機の設置基準等については、警察庁が示す「信号機設置の指針の制定について」に基づいており、横断歩道については道路法及び道路交通法に基づく「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」(内閣府令・国土交通省令)に基づき都道府県公安委員会が設置することになっているという。
だが、道路事情は場所ごとに異なるため、交通量や事故の発生状況、交差点の形状などを勘案し、歩行者の安全を確保するため個別に必要性を判断するそうで、肥子町の横断歩道は「横断歩行者の安全を確保するといった観点から、設置の必要性を認めた」とのこと。
また、白線の幅は45cm~50cm、白線と白線の間隔は白線の幅と同じという寸法も内閣府令・国土交通省令で定められているが、道路の形状等により寸法を縮小することができるそうだ。
「白線が1本だけだと横断歩道と認識されにくいため、白線の幅を狭くするなど、現場の状況に合わせる場合があります」
■京都と静岡でも原則に基づいて設置を判断
京都市下京区北町にも、大阪と同じく2本線の横断歩道がある。京都市営地下鉄・五条駅から東本願寺の方向へ歩いていくと、コンビニエンスストアとオフィスビルの間に挟まれている。
信号機と横断歩道はセットで設置されると紹介したが、この場所では信号より先に横断歩道があった。
京都府警察によると、1969年5月1日に、横断歩道が設置されていた記録がある。信号機が設置されたのは、その約3年後の1972年1月のこと。
「横断歩道が先にあったようですね」
道路が十字にクロスする交差点で、この道路だけ道幅が極端に狭い。安全を確認して、さっと渡ってしまえそうだが、横断歩道を省略できない理由があるという。
「横断歩道がある場所の付近では、その横断歩道を渡る義務が発生します。横断歩道を4面に設置することで、全ての方向に対する横断の安全が担保されますし、安全や利便性の面からも、4面に設置しています」
ちなみに京都では、道路に合わせて白線の幅を調整することはなく、省令の規格どおり45cmで統一しているそうだ。
そして、静岡県伊東市東松原町の大川橋交差点にある横断歩道。こちらもやはり2本線である。
静岡県警察によると「設置基準に従い車両と歩行者の交通の流れを考慮して、信号機の設置された交差点と認識せず交差点に進入する歩行者と、青信号に従い進行してきた車両との事故を特に防止する必要性を認めて、横断歩道を設置しております」とのこと。確認のできる2018年以降、この横断歩道で歩行者が負傷する交通事故は「0(ゼロ)件」だそうだ。
日本一短い横断歩道として3府県の例を紹介したが、どれがいちばん短いかを競うのは野暮というもの。探せば日本のどこかに、もっと短い横断歩道があるかもしれない。
京都府警のコメントにあるように、道路を横断しようとする歩行者は、横断歩道がある場合は横断歩道を渡る義務がある。こんなに短い横断歩道それぞれに設置された理由があることに想いを馳せながら、自分と周囲お互いの幸せのため、横断歩道を渡りましょう。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)