片言日本語で「カンコー、カンコー」 京都・嵐山や清水寺付近で横行する白タク 摘発阻むアプリ決済

 嵐山や清水寺周辺といった京都の観光名所で、中国人ら旅行者相手の無許可タクシー「白タク」が再び横行している。新型コロナウイルス禍が収束し、訪日客の回復に伴って各地で出現。事故時に補償が十分に支払われない恐れがある上、一部で車道の混雑を招くなどしている。京都府警は違法な白タクに目を光らせるが、「友人を乗せているだけ」と言い逃れされることも多く、摘発には課題が多い。

 1月末、京都市右京区の渡月橋近く。検問をしていた府警の捜査員が白色ナンバーの黒ワゴン車を停止させた。「後ろに誰かを乗せているのか」と運転席の男性に問いかけると、「観光、観光」と片言の日本語で返された。「どこからどう見ても白タクだ」と捜査員がつぶやく。府警によると、この日は1時間の検問で、白タクとみられる7台の車両を確認したという。

 近畿運輸局京都運輸支局によると、白タク業者の多くは旅行者と交流サイト(SNS)やアプリで連絡を取り合い、運転手としての役割だけでなく観光地の案内役も務めて報酬を得ているとみられる。コロナ禍で減少したが、昨年に中国が水際対策を緩和してから、再び増加に転じているという。

 白タクは観光地や繁華街で旅行者を降ろし、周辺に停車していることが多いという。嵐山では阪急嵐山駅(西京区)近くの路上やコンビニの駐車場、清水寺(東山区)の場合は東山五条交差点周辺での目撃が多い。四条通では、タクシーの乗降や荷物の積み下ろしのために一時停車できる「アクセススペース」に長時間停車していることもあるという。市個人タクシー事業協同組合の田中民郎理事長は「車を止められなかったり、車線が混雑したりと、非常に迷惑している。コロナ禍前と状況は変わっていない」と憤る。

 国の許可を得ずに営業している白タクは道路運送法違反となり、ドライバーには3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科せられる。任意保険に加入しておらず事故の際にトラブルになることもあり、府警は警戒を強める。

 一方、摘発には課題もある。同法違反罪を適用するには運賃の受け渡しを立証する必要があるが、白タク事業者と利用客はアプリで決済を済ましているケースも多く、捜査関係者は「金の流れが見えづらい。知人を乗せているだけと言われれば、それ以上追及するのは難しい」と打ち明ける。

 白タクはツアーのパックに組み込まれていることもあるといい、訪日客の多くは違法性を認識していないという。府警は観光地の土産物店などにチラシを配布し、周知を図っていくとしている。

(まいどなニュース/京都新聞)

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