スマホそっくりな「ただの黒い板」なぜ発売?使い道はカフェでの場所取り…以外にもさまざま

見た目はスマートフォンのようだが、実はただのアクリル板…というユニークな商品「AcryPhone」(アクリフォン)がSNSで話題になっている。なぜ「スマホっぽい板」を作ろうと思ったのか、そしてどのような使い道があるのか。開発者を取材した。

■「作品」のニュアンスが強い

名前に「Phone」がつくが、実際は7.1センチ×14.6センチの黒いアクリル板。電話機能もなければ、画面もボタンも充電口もない。しかし不思議なことにぱっと見はスマホに見え、保護フィルムやケースを付ければさらに見分けがつきにくくなる。

開発したのは、クリエイティブスタジオ「エコードワークス」(東京都)の福澤貴之代表だ。福澤さんはこれまで「ビール缶のようなデザインをした哺乳瓶カバー」「胸が大きく見えるTシャツ」といったユニークな品を世に送り出してきた。

AcryPhoneに関しては明確な使い道があるアイデア商品というより、発想を具現化した「作品」のようなニュアンスが強いという。外出先で電池の切れた自分のスマホを何となく眺めていた時、「ただの黒い板を作ってもスマホに見えるかも」と思いたったそうだ。

「昔のスマホって背面が丸みを帯びていたり、ホームボタンがあるから画面が占める割合が今よりも小さかったりしたでしょう」。かつてはデザインに多様性があったスマホが、時代が進むにつれてメーカーを問わず、シンプルな黒い板の形状へとカーシニゼーション(収斂進化)しているさまが面白いと福澤さんは感じた。そうした潮流を、逆に黒い板を発売することで表現したかったというわけだ。

福澤さんは「確かに今のスマホってアクリル板みたいだよね、と共感して面白がってくれる人がいたらいいなぁという思いで世に出しました」とする。

■どうやって使う?広告撮影、盗難対策、子どもに持たせる…

いわば「ネタ」的な側面も強いAcryPhoneだが、2023年1月の発売以来、X(旧ツイッター)でたびたび話題に。今年4月に福澤さんが紹介したポストにも2.7万件のいいねが集まった。3300円と決して安くはないが、一時完売するなど予想以上の反響があったという。

そしてこれまで「こんな使い方もあるのでは?」といった提案が多数届いた。もともと福澤さんが想定していたものも含め、以下のような例がある。

カフェでの場所取り(※スマホやハンカチで場所取りすると盗られる可能性もある)/商業広告などで小物として映るスマホの代用に(※スマホのメーカーに許諾を取る手間が省ける)/スマホに依存しがちな人のデジタルデトックスに/推しグッズのスマホケースを飾っておくために/海外旅行時の盗難対策(身代わり)/学校で先生にスマホが見つかって預けなければならない時の身代わり/1歳の子どもがスマホを触りたがるからこれを渡して満足させている…など。

「私の視点にはなかった活用法がたくさん出てきてとても発見があった」と話す福澤さん。特に「推しグッズのスマホケースの中身」というニーズは思いもよらなかったという。

■ただ板を切るだけ、のはずが…思わぬ苦労

製造方法は「ただアクリル板を切るだけ」かと思いきや、開発中には想定外の苦労もあった。

アクリル素材をカットする際、諸般の制約があり四辺のヘリに丸みを持たせる「面取り」ができない。そのため、スマホのサイズ通りにカットしても、面取り分していない分わずかに角張ってしまい、対応するスマホケースに入らなかったのだ。

「ケースに入れてもらうことでよりスマホっぽく見えるだろうというのはあったので、そこはこだわりました」。0.数ミリ単位のサイズ調整を繰り返し、ケースにすっぽりと入るようにした。ちなみに形状は某Phoneを彷彿とさせるが、参考にした機種を聞くと「最もメジャーなスマホケースから逆算したらこのサイズになりました」とのこと。

これ以外にも、世界観を作り込むためにこだわったと福澤さんが胸をはるのは、Webサイトやパッケージのデザイン。サイトは洗練されたグラフィックに「潔いほど徹底的なFLAT BAR」「授業中、会議中、上映中 スマホはNG? これならOK」など、しゃれのきいたコピーが添えられている。パッケージもスマホを彷彿とさせる箱型のデザインにした。

福澤さんは「本当にただの板なので⋯その点を踏まえてシャレとして楽しんでいただけたら幸いです」と話している。

(まいどなニュース・小森 有喜)

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