頭を金槌で殴られ、粘着テープでぐるぐる巻きにされていた猫 2年以上の歳月をかけて少しずつ心を開き、新たな家族の元へ
■生きたまま粘着テープでぐるぐる巻きにされていた猫
次郎くんは、2015年10月初旬、豊島区南長崎の公園で、粘着テープでぐるぐる巻きにされ、首に怪我をしている状態で紙袋に入れて捨てられていた。
近所に住む人から「紙袋の中にテープで足を縛られた猫がいる」と110番通報があり、署員が、公園の水飲み場近くのごみ箱の横で発見したという。粘着テープで生きたままぐるぐる巻きにされていただけではなく、顎にも傷があり、右耳の後ろに殴られたような痕があり血を流していた。
次郎くんは目白署に保護され、首の傷の診察と治療の為に動物病院に連絡が入った。その病院にはたまたまNPO法人ねこけんのメンバーが勤めていたが、その時は不在だった。
警察と病院で治療費の話などをしたが、警察も支払い等の確認をしなければならず、次郎くんの来院は保留になっていた。ぞの後、夜勤で出勤して来たメンバーが事の次第を知り、すぐに警察へ連絡。
引き取りと治療を申し出たという。
その時には、すでに次郎くんは愛護センターへ移送されていたが、警察官がすぐに猫を迎えに行き、メンバーの所に届けてくれた。
■2年以上の歳月をかけ心を開き、家族の元へ
次郎くんを虐待した34歳の自称猫好きの男は、後に警察に逮捕された。次郎くんは男に頭を金槌で殴られたため、片方の目は動きが鈍く、首は少し傾いたままだという。幸い一命を取り留め、ねこけんへやって来た次郎くん。当然のことながら人間に対して固く心を閉ざしていた。
人を見ると威嚇三昧。二度と同じ思いをしたく無い、あの恐怖から逃れたいと思って必死で威嚇攻撃をしてきたそうだ。シェルターの中では室内フリーにはなっていたが、次郎くんは扉の開いたケージの中の、ベッドの下から出て来なかった。
「シェルターでは、メンバー皆で、次郎に無理強いをしないで、次郎の心のドアの開くスピードに合わせ寄り添いました。その結果、少しずつ心を開いてくれて、掃除の時に隠れなくなったり、人前でごはんを食べたりできるようになりました。ここまで来るのに2年ほどかかりました。」
次郎くんはシェルターを出て、メンバーのICKさん宅に行き、新たな生活を始めた。
「なかなか心を開いてくれない次郎を預かって、次郎とじっくり向き合いたいと思いました。」
ICKさんは、じっくりゆっくり次郎の心の分厚い壁を少しずつはがし、距離を縮め、新たな信頼関係を築いた。数年後、ようやく閉ざされていた次郎くんの心が扉が開き、表情も明るく優しくなっていった。どんどん愛らしい表情を見せるようになり、ついに運命の出会いが。2020年8月、優しいご夫婦に迎えられ、先住猫で元保護猫ミーナとともに穏やかに暮らしているという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)