路頭を彷徨い、疥癬を患っていた親子猫を保護→入院治療し、里親に引き取られ幸せつかむ
■路頭を彷徨っていた親子猫
宇宙(そら)ちゃんと未来(みらい)ちゃんは親子の元保護猫。2012年1月愛護団体NPO法人ねこけん(以下、ねこけん)に保護された。
「宇宙と未来」親子は、元々は外で暮らしていた。耳か凍り付きそうなほど寒い日に、ひどい皮膚病にかかっている所を発見された。発見者は、ねこけんに相談した。
「2012年の年末、『S町に皮膚病の猫ちゃんが2匹いるが、どうすれば良いのでしょうか?』と心ある近隣の方から相談がありました。すぐに、ねこけん部隊が様子を見に行くと、親子で仲良く疥癬になっていることが分かりました」
母猫は2才くらい、子猫は生後5ヵ月くらいに見えたが、子猫の方はお腹が大きく、妊娠しているか腹水が溜まっている可能性があると思われた。
「とりあえずご飯を出してみると、親子で我先にとご飯を奪い合っていました。あまりの食い付きに、もしかしたらエサやりさんがいないのかもしれないと思い、その後は毎日現場へ足を運び、様子をみましたが、やはり決まった餌やりさんがいないと判断して良さそうでした」
母猫の未来ちゃんの皮膚病の状態が悪く、首は岩のようにごつごつし、毛は抜け落ち、目は開かないほど悪かった。なぜか宇宙ちゃんの身体には無数のひっかき傷があったという。
■疥癬の猫は入院できない
ねこけんボランティアの家は常に猫がいて、隔離するスペースも少なく、疥癬猫を保護することはできなかった。しかし、宇宙ちゃんはお腹が大きく、万が一にも外で産まれてしまった場合、この寒さでは助からない。悩んだ結果、2匹を入院させられる病院がないかを探すことになった。
「たくさんの病院に問い合わせてみたのですが、疥癬という病気は入院する必要がないとのことで、2匹を受け入れてくれる病院はありませんでした。疥癬は非常に感染力が強く、沢山の動物を受け入れなければならない動物病院では嫌われるのかもしれません」
入院は諦め、毎日のご飯に薬を入れて治療する方向に切り替えたが、お腹の大きな宇宙ちゃんの状態が気になった。薬入りのご飯をあげて3日目、ねこけんの賛助会員Kさんから新年の挨拶メールが届いたので、疥癬猫がいると相談すると「私が入院できる病院を紹介してあげるわ!」と疥癬猫でも入院できる病院を紹介してくれた。
■親子一緒に育ててくれる人を探して
親子猫は1週間入院して、無事に退院した。その時、妊娠の可能性を危惧していた宇宙ちゃんは、なんと男の子だと判明した。
「獣医さんによると腹水ではなく、便が大量に溜まっていただけだそうです。身体にあった引っ掻き傷は、もしかしたら雄猫にいじめられていたのかもしれません。母猫の未来は風邪をこじらせたので、退院しても通院することになりました」
治療をしながら里親を探した親子。何度かトライアルに行っては戻ってくるのを繰り返した。数か月の間、2匹一緒に育ててくれることを絶対条件に里親を探し続けてきた未来ちゃんと宇宙ちゃん。2012年4月、ブログを読んでいたご夫婦から声がかかった。
「お見合いの話がとんとん拍子に進み、親子をお届けしたら、ケージやキャットタワー、数えきれないほど様々なオモチャを用意して下さっていました」
■やっと掴んだ幸せ
名前は、漢字からひらがなになった。ずっと続くと思われた幸せだったが、2016年12月みらいちゃんの体に異変が起きた。検査の結果、癌が発見されたという。
「ご家族様は、未来のために出来る事は何でもやって、この先も一緒に楽しく暮らせるように、みらいの体を心配し、悩みながら向き合ってくれました」
抗ガン剤治療によって、「鼻が苦しそう」というのはなくなったが、だんだん食欲がなくなっていき、脳への転移があったのか、家の中を徘徊することが増えていったという。
「もう長くはないかなと思っていた矢先、4月18日の朝、ご夫婦が仕事に行く前に痙攣を起こし、そのまま亡くなったそうです」
みらいちゃんが弱っていく中、そらちゃんがみらいちゃんを励ますように寄り添う姿もよく見かけられたという。飼い主の夫妻は、
「もう少しみらいと一緒に過ごしたいという私たちのわがままで、みらいに辛い思いをさせてしまったかなと感じることもあります。みらいがいなくなってしまったのはとても悲しいですが、最近はそらが私たちを励ますように寄り添って来てくれます。そらもやっぱり寂しいのか、今までより甘えん坊になった気がします。普段はのん気なそらですが、そらの優しさを感じます。今までみらいに構ってばかりで、そらに寂しい思いをさせてしまっていたと思うので、しばらくは思いっきり甘えてもらおうと思います!」
夜の空気が凍り付く中、草むらに身を寄せ合って生きてきた親子。みらいちゃんもそらちゃんも揺るぎない幸せを掴んだことは間違いない。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)