「あと月に1万円くらいなら…」住宅ローンの毎月返済額“あともう少し予算アップ”の落とし穴 想定外の値上げラッシュで、あわや火の車
住宅購入の際、候補の物件の絞り込みのために真っ先に考える条件のひとつが「予算」です。特に毎月いくらくらいまでなら払えるのか、返済額をイメージする方が多いのではないでしょうか。
とはいえ、何年ローンを組むか、貯蓄からどのくらい頭金を入れるか、祖父母世帯からの購入資金援助があるかどうか…など、条件が変われば月に必要な返済額も大きく変わっていきます。当初のシミュレーションでは万全の計画だったのに、知らぬ間に「火の車」になる危険性だってあるのです。
■月に1万円ローン返済額をふやせば、理想の広さに
Aさん(関東在住、40代、パート)がマイホームを購入したのは今から8年前、二人目の子どもが幼稚園に入園するタイミング。
Aさんは二人目の子どもの育休があけて職場復帰をしたものの、年少の子ども二人を抱えての共働きに体力的な限界を感じ、新卒から勤めてきた会社を退職。都心から離れ子育てをしやすい環境にマンションを購入することに決めました。
それまでも夫ひとりの収入で家計をやりくりし、Aさんの収入はすべて貯金にしてきたため、夫一人の名義でローンを組んでも問題なく生活できると考えたAさん夫婦ですが、さすがに郊外でも人気エリアやエキチカ、広々80平方メートル越えの物件となると、予算を超えてしまう物件が少なくありません。
結局「これまでより電車に乗る時間が長くなる分、駅まではバスではなく歩ける距離にしておきたい」という夫の意見を優先し、月の返済額で1万円、支払総額が300万円当初予算よりも増える物件に決めたそうです。
そもそも当初予算はずいぶん抑えめにしたシミュレーションをもとにしたもの。「妻もそのうちパートに出るだろう、夫もまだまだ昇給するだろう、ボーナス払いも併用すれば、家具家電の買い替えは諦めてもう少し頭金を入れれば…」と、いろいろ考えていけば、もっと高額なマンションも購入できると考えていたのでした。
当初予算を超えた現在の物件を契約する際も、「ボーナスから10万円を返済に入れれば、ゲストルームとライブラリスペースがある別のマンションに手が届く。もっと頑張ってみるべきか」と、よりグレードアップした物件にするかどうかギリギリまで悩んだといいます。しかし、実はこれ以上予算をアップしていたら、A家の家計は「火の車」になるところでした。
■こんなにどんどん値上げされていくなんて…
Aさんが「予想外」だったのが、家計の固定費がどんどん増えていくこと。
最初の予想外はマンション購入後たった2年で管理費と修繕積立金が計1万円アップしたことでした。将来の積立金不足に備えましょうという理事長の働きかけがあったのだとか。
次に痛手だったのが、夫の定期昇給分でほんの少し年収が上がったことで、保育園負担額が月額1万3000円アップ。
さらに子どもの学資保険に追加加入し、今までほとんどかからなかったスマホの機種代に毎月お金がかかるようになり…。光熱費などの値上げラッシュも追い打ちをかけました。
外食や衣料費、旅費は子どもが大きくなるにつれて上がっていくイメージはありました。そういった費用は「いざとなったら我慢すればいい」と思っていましたが、節約しづらい固定費がこんなに上がっていくことは想像していなかったそうです。
「1~2万円くらいであれば、いろいろと家計の支出が増えてもの固定費が上がっても、対処できると思っていました。しかしここまでドミノのように固定費が上がってしまうと…。よりグレードの高いマンションは購入前にあきらめて正解でした」とAさん。
最初にしっかりお金の計算をしていたつもりでも、ローンシミュレーションや物件を見比べているうちに「もうちょっと頑張れば、こっちのマンションに住めるのか」と心が揺らいでしまうもの。みなさんは大丈夫でしょうか。
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)