道頓堀の待ち合わせスポット「タカハシ君」像があと数日でいなくなる!? 街の移り変わり見つめ続け60年 市民の熱い声を受け意外な場所へ移転
大阪・道頓堀の待ち合わせスポットとして親しまれてきたスポタカビル前の銅像、通称「タカハシ君」ことフェアープレイ像が、6月19日に大阪ミナミの街から姿を消す。
フェアープレイ像は1965(昭和40)年、スポーツタカハシ(スポタカ)創業者の高橋勝雄氏が公正なスポーツ界の発展を願い、「野口英世像」などの作品で知られる彫刻家・塩崎宇宙氏に依頼して誕生した。
そこからおよそ60年。道頓堀の観光名所・グリコの看板と共に、ランニング姿で変わりゆくミナミの街を見守り続けてきた名物像。昭和・平成の待ち合わせ文化では「タカハシ君」の愛称で待ち合わせスポットとしてもおなじみの存在だった。しかし、このほどのスポタカ本社移転に伴い、彼も引っ越しすることになったのだという。
驚いたのは、その引っ越し先だ。新天地はなんと瀧谷不動尊(富田林市)という由緒ある寺院。実は今回、取り壊しという切ない話も出ていた彼を守ったのは、昨年11月に5代目社長に就任した高橋勇多氏の熱意だった。
「スポタカは今年で創業102年になります。僕は会社を引き継ぐ時、ひいおじいちゃんの代から続くスポタカ100年の歴史を次世代につなぎたいという思いがすごくありました。フェアープレイ像はその歴史の象徴ともいえる存在ですから、取り壊しはなんとしても避けたかったのです」(高橋社長)
さらに、大阪の人たちの声がその想いを強くさせる。
「名刺交換の場などでスポタカという社名を見ると、みなさん『あの像の前でよう待ち合わせしましたわ』と楽しそうに話してくださるんです。街の人たちの楽しい記憶の中にもタカハシ君がいるんだと思うと嬉しくて。なおさら像を残したいという気持ちが強くなりました」(高橋社長)
とはいえ、本社の移転先には像を設置できる場所がない。ゆかりのある人たちに移設先を相談していたところ、創業者の代から親しくしていた瀧谷不動尊が快く像を譲り受けてくれることになった。
瀧谷不動尊は、目の病気にご利益があるとされることから「芽の出るお不動様」として、商売繁盛や開運などの祈願で多くの人が訪れる寺院。賑やかな道頓堀とは一転、豊かな自然に囲まれた場所にある。
「視力の弱かったひいおじいちゃんが熱心に通っていたそうで、そこから代々お世話になっているんです。像を引き取ってもらえるだけでもありがたいのに、『たくさんの人が見られるように』と見晴らしのいい駐車場に置いてくださることになりました」(高橋社長)
瀧谷不動尊の荒谷純榮住職は、フェアープレイ像を譲り受けた理由をこう話す。
「(高橋)勇多社長の『創業からの象徴である像をなんとか残したい』という熱意に深く共感しましたし、スポタカが大阪のスポーツ文化を育んできた証として残す価値があると思いました」
スポタカはこれまで100年もの長きにわたり、さまざまなスポーツイベントの協賛を行うなど、大阪のスポーツ文化の発展に貢献してきた。また、もともと競技系スポーツよりもサーフィンやスケートボード、スノーボードなど遊び心のあるスポーツにフォーカスしてきた会社でもある。
現在もeスポーツ事業を展開するほか、スケボーパークや草野球をテーマにした新店舗をオープンさせるなど、楽しくて新しいスポーツ文化の発展に積極的に取り組んでいる。
「スポタカに根付いている“サムシングニュー”の精神を大切にしながら、遊び心を形にする商品やサービスを展開していきたい。お客様に新しい出会いとワクワクを提供できる会社を目指します」(高橋社長)
スポタカもフェアープレイ像も、新天地で新たな一歩を踏み出す。道頓堀を走るフェアープレイ像が見られるのは6月18日まで。お近くの人はぜひ立ち寄ってみては?
(まいどなニュース特約・鶴野 浩己)