短いひもで玄関に10年、身動きできなかった飼い犬を保護→ガリガリで骨が曲がった体に獣医「非人道的な虐待」

「虐待から保護したあゆ太郎。毎回一気食い!全身に繋がる悪臭漂うノミだらけの毛玉を刈って体が見えた時の痩せた姿は今も忘れられません。犯罪者はいつも言い訳します。あげたけど食欲無く食べないと。無いのは御飯とお前の心。一緒にいた家族も同罪。酷い姿にも麻痺して慣れていただけです」

猫の保護団体から「虐待と疑われる飼い犬がいる」と保護の相談が4月中旬、大阪で活動する動物保護団体のNPO法人「アニマルレスキューたんぽぽ」(以下、たんぽぽ)に入りました。すぐに現場の住宅にたんぽぽの代表本田千晶さんらが足を運ぶと、玄関に顔がどこにあるのか分からないほど全身毛玉に包まれた1匹の犬の姿が…体からは悪臭も漂い、さらに短いひもにつながれ身動きできない状態でいました。つながれていた犬は、ヨークシャテリアのあゆ太郎くん。10歳の男の子だといいます。

当時あゆ太郎くんは、歩くのもフラフラして衰弱していたとのこと。保護した後には、たんぽぽのシェルターであゆ太郎くんのふん尿まみれの毛玉を刈ると、大量のノミも発見。さらに毛玉の下の体は骨が浮き出ていてひどく瘦せ細っていました。

「あゆ太郎にご飯を食べさせたら一気に食べてくれました。今まで食べられなかった分を取り戻すかのように、小さなガリガリの体でたくさん食べています。また病院に連れて行って診てもらったところ、両目は失明して何も見えず。長年、硬い場所に身動きできない状態にされていたため足の裏に大きなたこができていて…さらに『あちこち骨が曲がっていたり折れていたりするところもあり、蹴られたのだろう』と獣医から言われました。病院では『非人道的な虐待』と診断。警察にも連絡し虐待事件として捜査をお願いしました」

■保護から1カ月過ぎて…ドッグランでいきいきと自由に歩き回る姿に感涙

保護から1カ月以上経った今では、少しずつ体重も増えてただれていた皮膚もきれいになってきたという、あゆ太郎くん。ただ曲がった足の骨はかなり時間が経過して固まっているため、治すことができないといいます。

「残念ながら治療をしても足は曲がったままではありますが、長年太陽に当たらない暗い冷たい場所にふん尿まみれでずっとつながれていたので、ドックランに連れて行くと自由に歩くのが楽しくて仕方ないようで…曲がった足を引きずりながらも興味深そうにあちらこちら歩いている姿に感涙です」

あゆ太郎くんは冷たい硬い玄関にずっとつながれ自由を奪われていましたが、保護されて初めて太陽のもと外の空気を吸いながら歩く楽しさを味わうことができました。今回あゆ太郎くんの保護を通じて、本田さんはこう訴えます。

「あゆ太郎については飼い主から了解を得て保護することができましたが、ペットが虐待されていた場合、人間の子ども同様ペットの『所有権の壁』(※)でちゅうちょして保護できず、命を失い手遅れになるケースが多々あります。今回のケースのように明らかに虐待と判断できる場合は飼い主の所有権と言う前に、虐待された者の姿を見るべき。虐待犯に所有権などあり得ず保護して守っていくべきと考えます」

※ペットの『所有権の壁』:動物愛護団体などが保護を申し出た際、飼い主らから許可を得て譲渡されれば保護できるが、飼い主らが拒否した場合は飼育環境が劣悪であっても、強制的に保護することができない。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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