【虎に翼】男装の「よね」役で話題の土居志央梨 同じ「どい」でも、「井」「居」では分布に違いが…意外な名字のルーツとは?
NHK連続テレビ小説「虎に翼」で法律を学ぶ男装の女性・山田よね役を演じ、注目度が急上昇している土居志央梨。
「どい」と聞くと、「土井」を連想する人も多いだろう。確かに「土井」は名字ランキング300位以内というメジャーな名字だが、「土居」も600位以内でやはりメジャーな名字である。
実は、「土井」と「土居」には分布の違いがある。「土居」は圧倒的に四国に集中しており、とくに高知県と愛媛県に多い。そして、その他の地域では「土井」が多く、とくに関西から山陽地方にかけて「土井」が集中している。
「どい」とは、土を盛りあげてつくった土手や堤のこと。近世以降は「土塁」ということが多いが、中世では「どい」といった。
そして、中世の武士は屋敷の周りに防御のために「どい」を築くことが多く、こうした「どい」を巡らせた屋敷そのものも「どい」と呼ぶこともあった。
四国では、こうした「どい」を漢字で「土居」と書き、「土居」のあった場所がそのまま「土居」地名として残っていることも多い。そして、そこに住んだ人が「土居」を名字にしたとみられる。
最も有名なのが伊予の土居氏で、同地の戦国大名河野氏の一族。伊予国久米郡石井郷土居(現在の愛媛県松山市)に住んで土居氏を称したのが祖である。土佐の戦国大名一条氏の重臣にも土居氏があるなど、「土居」は四国では名の通った名字であった。
一方、「土井」は江戸時代初期に幕府の大老をつとめた土井利勝が著名。
この「土井」氏のルーツの地は愛知県岡崎市土井で、この地は「土居」と書かれることもあったといい、「土居」と「土井」にはとくに意味の違いはないようだ。
その子孫は大名3家にわかれ、江戸時代では「どい」と言えば「土井」が一般的になっていった。
土居志央梨は福岡県生まれで大阪育ちとのこと。福岡県でも「土井」は「土居」の2倍以上ある。それでも、桂川町には「土居」地名があり、筑豊地区では「土居」という名字も多い。
因みに富山県では「土肥」と書いて「どい」と読む名字も多い。
◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。