京の老舗和菓子屋、12店の25年におよぶ横のつながりとは? 美しい意匠の菓子を育んだ、想いを聞いた

 京都在住の和菓子マニア「ふれんちぶる(@FCVPf07VuvKlVdb)」さんは、京都老舗和菓子屋の和菓子の紹介を中心に、菓子イベント情報などを毎日Xに投稿していて、和菓子好きから買い物の参考になると人気になっています。そんなふれんちぶるさんが、現在注目しているイベントが、6月21日から開催される『山水會25周年記念展覧会 お菓子はいつでも楽しいvol.2』です。

「山水會」は、25年前(1999年)に同世代の老舗和菓子屋の後継ぎが情報交換と交流を目的に発足。参加するメンバーを徐々に増やし、現在は12社12名が名を連ねます。同イベントでは、そんなメンバーのこれまでの「道」とこれからの「道」を表現した12作品のお菓子の展示のほか、12か月の歳時記のお菓子、菓銘をもつ生菓子など、食文化や季節が感じられる美しい意匠のお菓子が展示されます。

「お菓子の展示あり、トークショーあり、山水會のメンバーも勢揃いで貴重なお話も聞ける。お菓子好きの方には楽しくてたまらないイベントです」と、ふれんちぶるさん。

 伝統を守り暖簾をつなぐ老舗は、外から見ると閉鎖的な印象もあるなか、後継ぎから主人へと立場を変えながら、和菓子屋をつなぐ活動を25年間続けてきた「山水會」。山水會25周年記念展覧会実行委員会の副実行委員長・下邑修(「亀屋良永」代表取締役)さんに、活動への想いを聞きました。

■老舗和菓子屋がつながる「山水會」とは?美しい意匠のお菓子の展示も

──「山水會」の発足にはどのような経緯があったのですか?

 山水會が発足する2、3年くらい前に菓子屋の後継ぎとして状況が同じような方と食事を共にし、お菓子屋というものについて様々な話をいたしました。当時は30歳前後で、持っている経験・知識・技術などがまだまだ未熟であることを確認し合い、やはり勉強して様々な物を吸収していく事の重要性を強く思うようになりました。

 そこから数年後、紆余曲折もありましたが、当時たまたま知り合っていた同世代の菓子屋の後継ぎ5名で集まりを作り、情報交換などをおこない始めました。そして和菓子の原材料でもある葛の精製工場(奈良県宇陀市)にみんなで見学に参りました。これが山水會の始まりです。

 最初の1年で会員も5名から7名に増え、規約なども作り、会としてしっかり活動していく事を確認いたしました。

──老舗和菓子屋の後継ぎとしてのご不安があったということも、山水會を発足された理由にありますか?

 もちろん不安だらけでしたが、まだまだ体力のある30歳前後でしたのでお互いがむしゃらにいろいろな物を吸収していったと記憶しています。展示会などで業界の大先輩同士の話に耳をそばだてていても、内容は分からない事ばかりで焦りは膨らんでいきましたが、月に一度の山水會の例会で話を共有し合い、そして探求していきましたので少しずつ不安は解消していきました。初めから後継ぎという事を考えず、数年後に成長した自分が後継ぎとして相応しいのか?周りから認められるのか?と、自問自答しながらとにかく得られる知識・経験・技術は得ておこうと思っていました。

──ライバルとして意識されることはなかったのですか?

 商売敵とかライバルとかいろんな表現がありますが、その様な事をあまり考えたことはなかったです。 逆に一つの商品、例えば各店の水無月などを持ち寄ってお互い試食し合ったりしていました。まだ店を背負っているとか代表とかそんな考えではなく、単に一個人の菓子屋に従事している者としてみんなが貪欲にいろんな物を得ようとしていました。

 25年続いた会ですが、振り返ってみるとそういった好奇心の塊だけではこのように長くは続かなかったと思います。時にはゆっくりとした例会や、それこそ一年中ゆっくりした年もありました。そんな時に他団体や百貨店から依頼を受け「じゃあ、頑張ろうか」と一致結束する機会も沢山頂きました。ここ数年、時には販売活動もしてきましたが、やはりあまり商売と言う物を前面に出さずにやって来たことが良かったのかなと思います。

──最近ですと、百貨店「ジェイアール京都伊勢丹」のイベントで、瓢箪の共通木形でつくった落雁「彩瓢菓撰」の販売もありました。今回の25周年記念展覧会もそうですが、共に活動されることはどのような意味があるのでしょうか。

 毎年おこなっているわけではないですが、やはりみんなの考え方や物の見方などは年齢を重ねていくと微妙に変化をしていきます。お互いが変化し合い、そこに重ねた経験を持ち合いいかに化学反応するか。さらにお菓子の世界だけの話ではなく人との繋がり・広がりも再認識する事ができます。イベントはご来場された皆様との交流の場でもあり勉強の場でもあると思います。また会員お互いの成長を再発見する場でもあるかもしれません。

──後継ぎから、和菓子屋を代表される立場になりました。これからの山水會はどのようなものにしていきたいですか?

 25年経ちましたので、やはり30歳頃と今ではものの見方、感じ方も変わってきています。また現在の物価高や人手不足に代表されるように周りの環境も変わってきております。そういった中で各々が最大限の努力をして店を守っております。

 責任者の立場になったとき、かつて若かった頃の様に「前だけを見つめたエネルギッシュな活動」とまではいきませんが、困ったことがあればお互い助け合いながらボチボチと会が続けば良いなと思っています。

■「山水會25周年記念展覧会」は6月21日から京都文化博物館 別館にて

 『山水會25周年記念展覧会 お菓子はいつでも楽しいvol.2』は6月21日から23日まで、「京都文化博物館 別館」(京都市中京区)にて開催。入場料は一般1000円(お茶券付き入場料1500円、高校生以下は入場無料)。

 山水會会員は「鍵善良房」今西善也さん、「総本家駿河屋善右衛門」岡本良太さん、「三木都」大塚真毅さん、「小堀日之出堂」小堀雅己さん、「船屋秋月」坂井敏宏さん、「亀屋良永」下邑修さん、「塩芳軒」髙家啓太さん、「笹屋春信」谷本清一さん、「鶴屋弦月」東元一祥さん、「二條若狭屋」藤田茂明さん、「亀屋良長」吉村良和さん、「千本玉壽軒」元島真弥さんの12名。

「高名な方々のトークショーや人気店のお呈茶、会場は重厚な佇まいの京都文化博物館。そして円熟味が出る年頃になってきました山水會会員の力作。全てが融合した展示会をぜひご覧いただけたらと思います」(下邑修さん)

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)

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