「え?サドルが無い…」それだけ盗んでどうするの? 近年増加している「自転車盗難」…元警察官に聞いた防犯対策
2022年3月に一般社団法人自転車産業振興協会が発表した「2021年度 ⾃転⾞保有並びに使⽤実態に関する調査報告書 要約版」によると、2021年の自転車世帯保有率は59.6%となっています。約6割の世帯が自転車を利用しており、移動手段や趣味の対象として多くの人の脚になっていることがわかります。
一方、2024年2月に警察庁より発表された「2023(令和5)年の犯罪情勢」によると、路上強盗、ひったくり、自動車盗、オートバイ盗、自転車盗など犯罪のうち街頭でおこなわれた「街頭犯罪」が前年比21.0%増と大幅に増加しました。新型コロナウイルス感染症の感染状況の変化により、人流の増加が要因の一つとして挙げられています。特に、傷害及び暴行のほか、自転車盗の件数が増えたと述べられています。
このような状況で、大切な自転車を盗まれないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。千葉県のベッドタウンで警察官として10年以上働いており、現在は警備会社に勤務する佐藤清三さんに、自転車盗難の実情と対策方法について話を聞きました。
ーどのような場面で自転車が盗まれるのでしょうか
私が働いていたときの傾向としては、自転車が盗まれる場面は大きく分けて2つありました。ひとつは、タクシー代わりに盗んで乗り捨てるパターンです。こちらは被害届を受け取った場所と自転車が発見された場所の距離がさほど離れていないことから、犯人がタクシー代わりに停めてあった自転車に乗り、自宅などに帰っていったのだと推測されます。
もうひとつは、スーパーマーケットやショッピングモールの駐輪場で盗まれるパターンです。特に、前輪がロックされる機械式の駐輪場に停めた自転車がよく狙われます。理由は、駐車場のロックに安心し、鍵をかけずに停めている自転車が多いからです。犯人は持ち主の代わりに100円、200円の駐輪場代を支払って、ロックを外し自転車を盗んでしまうのです。
ー盗まれた自転車はどうなってしまうのですか
3つのパターンが考えられます。まずは盗んで乗り捨てる自己消費です。次に盗んでそのまま使い続ける自己保有。最後は盗んだ自転車を分解し、オークションサイトなどで販売するというものです。
もっとも多いのは自己消費され、どこかで乗り捨てられるパターンで、自己保有する人も分解して売る人もかなり稀なパターンといえます。また、自転車盗難と一括りにはできないような珍しい事件が起こることもあり、すべての自転車が無事に持ち主の元に戻るわけではありませんでした。
ー珍しい事件とはどのようなものですか
例えばハンドルやサドルだけを盗む場面にはたびたび出会いました。ハンドルやサドルには製造番号が書かれているわけではないので、犯人を特定することは困難です。しかもなぜハンドルやサドルだけ盗むのか、その理由もいまだに分かっていません。
また、近ごろだと自転車に付けていたスマホホルダーが盗まれるなんてこともありました。これは自分で使用するために盗んでいるのでしょう。
ー自転車を盗まれないようにするにはどうしたらいいでしょう
まずは機械式の駐輪場などの有料の駐輪場に停めることです。その上で鍵を2重にかけてください。解錠に時間がかかりそうだと判断すると、犯人はその自転車を盗むことをあきらめます。
しかし、ハンドルやサドルなどのパーツの盗難を防ぐのは難しいです。自宅に停める場合であれば、自転車カバーをかけるという手段がありますが、自転車カバーを持ち歩くのは現実的ではありません。
一度、自転車盗に成功した犯人は、ひとつ成功するとその近くで繰り返す傾向があります。そのため、自転車の所有者がしっかりと防犯対策をした上で、街の住人と挨拶を交わしあうなどすれば、犯罪がやりづらい場所と認識され、自転車盗を減らすことができると考えます。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)