足が傷つき、3日3晩鳴き続けた捨て猫…優しい家族に引き取られ、迎えた穏やかな最期
銀河くんは、捨て猫だった。2012年7月、一般の方から愛護団体NPO法人ねこけん(以下、ねこけん)に、「足にケガを負った猫が30cmの高さの塀すら乗り越えられないので助けて下さい!」と通報があり、レスキューされたと。通報者によると、半年ほど前に捨てられたという。
ねこけんでは、通報者の方に下記のいずれか1つだけはお手伝い下さいとお願いしている。
①医療費の負担(全額ではなく、可能な額)
②一時預かり(里親様が見つかるまで)
③運搬等の身体を使ったお手伝い(対象となる猫に関わる単発でのお手伝い)
今回の通報は緊急性があり、一時預かりをして下さるとのことだったが、通報者の方が「保護猫が夜通し鳴くので、近所迷惑にもなるし、やっぱり一時預かりもできません」と言い出した。ねこけんメンバーのTさんは急いで銀ちゃんを迎えに行き、病院に連れて行った。
レントゲン撮影してもらうと関節を痛めていて、治らないようなら手術も考えなければならなかった。こうしてTさんが預かることになった銀河くん。おやつをあげようがご飯をあげようが、抱っこしようが、3日3晩大声で鳴き続けた。
「通報者の方も嫌にになるわねぇなどと納得してしまいました(笑)。動物病院に行って相談すると、獣医さんが猫用の精神安定剤を処方してくれました。すると、その晩からすやすや眠り始めたのです。きっと寂しかったり怖かったり、それなりの理由があって鳴いていたのだと思います」
■特大の幸せと突然のお別れ
その後、譲渡会で優しい家族が見つかり、「捨て猫銀ちゃん」は、「幸せな銀ちゃん」になった。誰もが、この先の銀ちゃんの長い長い幸せを信じていた。しかし、2015年3月、別れは急に訪れた。
「ご家族様から『銀ちゃんが、倒れた』とご連絡をいただいたその日の旅立ちだったそうです。急な訃報に私たちも言葉を失いました。ご家族様のお気持ちを思うと、どれほど辛いか…」
前日に、呼吸が少し荒いと感じたお母さんが銀ちゃんを病院へ連れて行くと、「肺水腫」と診断された。数時間酸素室へ入り、「オシッコで出す他はない」という診断結果に、治療をしながら様子を見て、完治するものと信じていたという。
翌朝、夕べと同じ場所で寝ていた銀ちゃんは、起き上がってほんの少しご飯を食べた。ご家族が仕事へ行く支度をし下りてくると、ちょうど銀ちゃんがトイレから出てきたところで、出たその途端、急に倒れ込み、苦しみ始めた。
「急いで病院へ行こうと車に乗せる寸前、お母様と二人の息子さんの目の前で最後に息を引き取り、銀ちゃんは、銀河へ駆け上って行きました。それでもご家族様は銀ちゃんを病院へ運び、蘇生を試みてくださいましたが、何をしても銀ちゃんは帰ってくることはありませんでした」
倒れる数十分前にはちょこんと座ってお母さんを見つめていた銀ちゃん。「あのね、ママ、話があるんだ。僕、今日行かなくちゃ。ごめんね…」と言っているようにも見えたそう。銀ちゃんはきっと、ご家族と過ごした楽しい思い出を胸に銀河へ帰って行ったのでしょう。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)