同僚の体臭が気になるけど…どう指摘すればいい? 社労士が解説する“デリケート”な問題への対処法「パワハラになりかねない」
日本には春夏秋冬の4つの季節があり、夏が近づくにつれて雨が多く湿気が高くなっていきます。この季節は気温が上がりはじめ、少し外出しただけでも汗が出てしまうため、体の臭いが気になってくる人も多いでしょう。臭いに敏感な人の中には、同僚の体臭が気になって仕事に集中できないという人もいるようです。実際、職場でのハラスメントの中には、臭いによって周囲の人に不快感を感じさせる「スメハラ(スメルハラスメント)」もあり、近年注目されています。
ロウエンデザイン株式会社が2023年3月に公表した、25歳以上50歳未満の会社員(正社員、契約・派遣社員)または公務員(教職員を除く)の男女を対象とした「気になるニオイ」のアンケート結果では、「体臭」が1位にランクインしています。
職場での迷惑行為(ハラスメント)の中には、臭いによって周囲の人に不快感を感じさせる「スメハラ(スメルハラスメント)」も近年よく指摘されるようになりました。
このように同僚の体臭が気になっている場合、どのように対処をしたらいいのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみました。
ーそもそも体臭は改善可能なのでしょうか
食事の臭いや、タバコや香水といった臭いは、その人が気を付けるようになれば改善される可能性があります。一方で体臭の場合は、その人自身が簡単に改善できるとは限りません。体臭が生じる理由は、大きく分けると3つあると考えます。
1つ目は、本人の怠慢が原因となるケースです。これは健康でありながら、同じ服を何日も着ているとか、風呂に入っておらず清潔でないとか、不衛生な状態を放置している場合が当てはまります。ただし、1カ月前までは清潔な格好をしていた人が、急に不衛生になってしまった場合などは2つ目のケースが原因かもしれません。
2つ目は、メンタルの不調などによって正常な判断ができなっているというケースです。実際に鬱病と診断された人のなかには、気力を失ってしまい風呂に入ったり、歯を磨いたりすること自体、億劫になってしまう人もいます。正常な状態であれば、清潔な格好で職場に行くべきであるとわかっていても、こうなってしまうと正常な判断ができません。
3つ目は、元々の体質による場合です。本人が気づいているかどうかは別として、体質や病気によって、体臭が強くなってしまう人もいます。風呂に入るなど清潔にしていても、なかなか防げないこともあるようです。
ー体臭の背景を知ると、デリケートな問題であると気付かされます
仮に体臭の強い社員がいて、その人に対して「お前、臭いな」と軽はずみに言ってしまうと、言われた側がハラスメントだと感じて問題になってしまうこともあり得ます。
これだけデリケートな問題なので解決するためには、まず臭いに困っている人が人事部に相談し、人事部から臭いのある人に産業医との面談を依頼するという慎重な方法をとる企業が多いです。
面談の目的を聞かれたら「職場環境の把握のため、産業医が社員面談をおこなっている」などの理由を伝えます。産業医が臭いの原因に寄り添って、場合によっては治療の提案もします。上司や人事から体臭を指摘されるより、産業医から指摘された方が周囲への気まずさを感じにくいのではないでしょうか。
ーそれでも問題が解決しない場合はどうすればいいのでしょうか
まず体臭の原因が本人の怠慢だった場合は、職場を清潔に保つことに反した行為なので、程度によっては懲戒処分が下されることもあるでしょう。一方で、メンタル不調や体質が原因の場合は、本人の了承をとってから配置転換を検討してみてはいかがでしょうか。解決が困難な体臭の場合、対応によっては臭いを出している本人への「パワハラ」になりかねないので注意が必要です。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)