出産後のお母さんへ特別な贈り物…子育てママらが創る「小説つきコーヒー」この夏販売 「自分に還るひとときを届けたい」
子育てに奮闘するママが自分に還るひとときを届けたいとの想いから、小説つきのコーヒーを思い立ち、実際に商品化した主婦たちがいる。Ⅹに何気なくつぶやいた一言が発端となって仲間が集まり、商品化プロジェクトが立ち上がった。この夏には、ネット販売を開始する予定だという。
発案者でプロジェクトメンバーのゆうこさんにお話を伺った。
■ママになった親友に「自分に還る時間」をプレゼント
コーヒーを味わいながら小説を読む。自分だけの世界に浸れる時間を、ドリップコーヒーと超短編小説のセットという形で商品化したのは、元看護師の専業主婦・ゆうこさんをはじめとする3人の女性たち。
A6サイズの見開きに短い小説が掲載されており、1杯分のドリップコーヒーがセットになっている。
「コーヒーを淹れている時間に読み切れるボリュームの、超短い小説をセットにしました」
原稿用紙にして10枚程度の「掌編小説」というジャンルがあるが、ゆうこさんたちはそれよりもっと短い300字前後で、ストーリーのある作品を制作した。作家はゆうこさんと、プロジェクトメンバーのひとりで、ライターのあやこあにぃさん。
作品タイトルは、ファンタジーがテーマの「石と少女」、友情がテーマの「乾杯しようよ」、出産と友情がテーマの「変わったのは?」の3本。どの作品も30秒前後で読み切れる。
これらの作品とセットになるコーヒーは、カフェイン0.1%未満のデカフェフレーバーコーヒーを展開する「極・馨 Gokkoh(ごっこう)」の「アーモンド」「ココア」そして「ノーマル」の3種。ノーマルはコーヒー本来の味、アーモンドとココアはそれぞれの香りと味わいがあるという。授乳中はカフェインの摂取が制限されるため、デカフェが選ばれたそうだ。
「コンセプトはFor motherではなくFor Best Friendです。ママになった親友に『自分に還る時間』を贈る出産祝いを想定しています」
また、パッケージデザインは、プロジェクトメンバーでデザイナーのりさこさんが担当した。作品とコーヒーのフレーバーとの組み合わせを、それぞれピンク・青・黄のカラーでイメージしたデザインになっている。
▽ノーマル/出産と友情に関連した作品・パッケージカラー/ピンク
▽ココア/友情に関連した作品・パッケージカラー/青
▽アーモンド/ファンタジー作品・パッケージカラー/黄
■発想のきっかけは自分の誕生日祝いに贈られた入浴剤セット
2023年1月、臨月を迎えていたゆうこさんは、Ⅹにある投稿をした。それは誕生日のお祝いに贈られた入浴セットを個包装しているラベルの裏にエッセイが書かれた商品から閃いて「紅茶とかコーヒーのパックの裏に、2~3分で読めるエッセイとかあったらおもしろいかも?」という、何気ない一言だった。
それに対して、知人から「小説がついたコーヒーをつくりませんか?」と声を掛けられたことが発端となり、先述のあやこあにぃさんとりさこさんが加わって、小説つきコーヒーの開発プロジェクトが動き始めた。
ゆうこさんとあやこあにぃさんが候補作品を書き、出産を経験した女性を含む数人の女性モニターから意見を聞いて、3作品が選ばれた。その作品のイメージに合わせて、りさこさんがパッケージをデザイン。コーヒーは「極・馨 Gokkoh」にコラボ商品を提案して、3種類のフレーバーを選んだという。
あるていど商品の形になってきた今年の春頃から、イベントやフリーマーケットに出店するようになり、評判は上々だという。現在はネット販売を開始するための準備を進めているそうだ。
「発売開始は、7月の下旬頃になりそうです」
6月には屋号を「Cafe Sonar(カフェ ソニャール)」と決めた。「ソニャール」は、スペイン語で「夢を見る」という意味だ。小説つきコーヒーの「忙しい現実から離れたひと時を提供したい」という意味合いと、ママに自分の夢を見てほしいという意味を込めたという。
商品のラベルは「Cafe Novel」とあるが、すでにSNSでは「小説つきコーヒー」として知られているため、通常は「小説つきコーヒー」と呼んでいるそうだ。
作品の中身は購入前に読むことができる。ただ、フレーバーとの組み合わせはあらかじめ決まっているため、作品で選ぶかフレーバーで選んでほしいとのこと。
■自分を諦めないで!
ゆうこさんには、ひとつの想いがあった。
「子供の名前をとって『〇〇ちゃんママ』という呼ばれ方はイヤだなという気持ちが、妊娠中からありました。ゆうことしての時間は、やっぱり必要だなって」
出産後、夜泣きする娘さんを抱きながら「私がどこかへ行っちゃった」と思うこともあったという。そんな中、小説つきコーヒーの開発に割いている時間だけは、「母」の立場から「ゆうこ」個人に還っている貴重な時間であり、気持ちの支えになっていたそうだ。
「世のお母さん方は、みなさん忙しくて大変だと思うんですけど、自分が熱中できたりワクワクできたりすることを見つけてほしいと思っています」
「そんなことは無理」と諦めず、自分を癒せる何かを見つけてほしいというゆうこさん。小説つきコーヒーの次の構想も少しずつイメージを膨らませているそうだ。
小説つきコーヒーのネット販売を成功に導けば、子育てに追われるお母さんたちに勇気を与えられるかもしれない。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)