エサを求めてコンビニに現れた外猫たち 近隣のエサやりさんの死去が理由だった あるボランティアの1年にわたるTNR活動

2022年2月、和歌山市のあるコンビニ店は、突如として外猫たちの「ニャーニャー」という大合唱に包まれました。

突然の猫たちの大集合により、コンビニ周辺は大騒ぎ。猫好きのお客さんは弁当の残りやキャットフードを与える一方、近隣住民の一部は猫たちを追い払おうとしました。

■餌やりさんが死去。餌場を失いながらも外猫たちは増え続けた

ことの発端はこうでした。

餌やりをしていた方の死去によって、猫たちは餌場を失いましたが、それでもなお数は増え続けました。ことの発端はこうでした。コンビニから数百メートル離れたエリアで、猫の内外飼いをしていた高齢者が死去。そこにいた猫たちが完全な外猫となり繁殖をし続け、餌を求めて集団で移動。そこで辿り着いたのがコンビニだったのです。

この状況を知った地元のボランティアSさんが立ち上がり、TNR(トラップ・ニューター・リターン)活動を始めました。TNRとは猫を捕獲し、不妊手術を施し、元の場所に戻すという活動です。1年かけて、エリア内の全ての外猫に対するTNRを完了しました。

■説得には時間が掛かった

理解を示さない住民への説得にも時間がかかり、結果としてTNR活動は1年もの時間を要しました。TNRを実施する前段階では、エリアで暮らす外猫たちの調査や、別の餌やりさんとの交渉、地元自治会の許諾などの地道な活動をSさんはほぼ1人で行っていました。

このSさんの活動を知った和歌山県の保護猫団体「城下町にゃんこの会」は、TNRにかかる費用などを一部協力し、また地元の心ある人たちからも支援金が寄せられたといいます。理解してくれる人がいる一方、全く理解を示さず捕獲に猛反対する餌やりさんなどもいて、説得が必要でした。結果的に1年という時間がかかったのでした。

■「ご飯をあげるだけでは猫たちは助かりません」

無事にTNRを済ませたこのエリアで暮らす外猫たちは、地元の餌やりさんなどから安定してご飯を得られるようになり、ほとんどの猫が地域に溶け込み、穏やかに暮らせるようになりました。

城下町にゃんこの会のスタッフはこう話します。

「地域でお腹を空かせた猫を見ると、誰しもかわいそうに思うことでしょう。でも、ご飯をあげたりするだけでは猫たちを絶対に助けることはできません。また、保護して助けてあげることはもちろんベストかもしれませんが、誰でもできることではなく、できたとしても限界があります。まずは、『よりかわいそうな猫を産まさないこと』『猫を増やさないこと』が先決で、そのためにはTNRなどの不妊手術をしてあげることが大切なのです。このことで助かる命はたくさんいます」

ほぼ1人でTNRを行ったSさんは、引き続き個人でTNRをはじめとした、外猫のお世話をし続ける一方、のちに城下町にゃんこの会にも「譲渡ボランティア」として参加。行き場を失った保護猫をお家探しも積極的に行っています。

地元内外の不特定多数の人たちが出入りするコンビニまで、ご飯を求めてきた外猫たちが、まずは落ち着いて過ごせるようになり本当に良かったと思いました。そして、このような取り組みや実例がさらに多く知られ、議論が交わされることで一匹でも不幸な猫が減ると良いなとも思いました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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