動物病院の前に箱 中には生まれて間もない5匹の子猫 防犯カメラには不審な人物 身元判明するも深刻な問題が浮かんだ 

和歌山県内の動物病院の前に段ボール箱が置かれていました。開けてみると、生まれて間もない子猫が5匹。動物病院関係者が防犯カメラを確認すると、段ボール箱は24時間前に置かれたことがわかりました。

■防犯カメラを元に「棄てた人」の身元が判明

後に、防犯カメラの画像から置いていった人の身元が判明。動物病院では警察に通報し、段ボールに入った5匹の子猫はいったん、この人の家に戻されることとなりました。

一度遺棄したこの人物がその後猫たちをきちんと飼育するとは考えにくいです。動物病院では、さらに地元の団体・城下町にゃんこの会に介入してもらい、5匹の保護やこの人の家の周囲にいるという複数の猫のTNR実施を依頼しました。

■家の周囲には何匹もの外猫たち。そして死骸も…

その人物の家の周囲には複数の外猫たちが確認されました。

聞けばあるときからこの家に外猫が訪れるようになり、「かわいそうだ」とエサをあげたところ、どんどん集まってくるようになったそうです。この外猫たちはいずれも不妊手術がなされている様子はなく、結果的に5匹の子猫が生まれたようでした。

周辺には悲しいことに外猫の死骸もありました。誰にも気づかれずに命を落とした外猫の死骸を前に言葉を失いました。

■リターンか保護か。現実的には全ての外猫を保護できない

結果的に、この家にいる複数の外猫たちは、一斉に捕獲され不妊手術が実施されました。大半の外猫を元いた場所にリターン。段ボール箱に入れられていた5匹の子猫は保護されることとなり、城下町にゃんこの会で世話を受け、「ずっとのお家」探すことになりました。

こういった場面でよく議論されるのが「どうして子猫は保護し、成猫はリターンすることが多いのか」というもの。スタッフはこう話します。

「TNRでリターンする外猫たちを思うと、私たちも本当に辛いです。できれば、全ての外猫に『ずっとのお家』を見つけてあげたいです。しかし、それは理想で現実的な話ではありません。外猫の頭数がとにかく多すぎるのです。そのため『せめて生まれて間もない子猫はリターンせずにお世話し、里親さん探しをしたい』と、保護に切り替えることがあります。また、重篤な病気を抱えていたり、怪我をしている外猫もリターンではなく保護することもあります。こういった猫が『外猫』として生き抜けるとは考えられないからです」

不幸な外猫たちを減らすためには「産まさない」ことしか対策はありません。

「外猫として生まれ、過酷な猫生を送り、若くして命を落とす外猫は今も後と経ちませんが、私たち人間に今にできることは繁殖制限しかないのです。地道な活動ではありますが、1匹でも多くの外猫に不妊手術を実施し、これ以上不幸な外猫を増やさないようにすることが今すべきことだと思います」

動物病院の前に置かれた段ボールの中の5匹の子猫の件は、外猫を取り巻く過酷な環境も伝えています。外猫のために人間ができること、無責任な餌やりのことなども含め、外猫にまつわる様々な議論は今後も必要です。動物とともに生きるより良い社会を築くために。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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