光すら感じていない元繁殖犬 両目摘出の大手術を乗り越えた 頑張りを見守っていた人が里親に
繁殖場から「引退犬」として保護された10歳ほどのシーズー、ボン。その月齢になるまで「人間の道具」として酷使され、さらにひどいドライアイを患っていました。涙が出ず、保護時には両目が白濁していました。
アイドッグ・レスキュー隊のスタッフは、ボンを動物病院に連れて行きました。診断結果は「光すら感じていない全盲。両目を摘出したほうが良い」というもの。スタッフは悩んだ末、獣医師の言葉を信じ手術を依頼し、ボンは手術を乗り越えました。
術後、約5日間の入院治療を経て、預かりボランティアさんのもとへ戻りましたが、目からの出血が数日間続きました。痛々しいその姿を見て、ボランティアさんは心を締めつけられるような思いを抱きました。しかし、何より一番辛く、そしてがんばったのはボン自身です。ボランティアさんは明るく接し、ボンの幸せな未来を信じて世話を続けました。
■ドッグランを自由に走る
両目の摘出手術は成功し、抜糸も終えて元気を取り戻したボン。預かりボランティアさんの家族全員が献身的にお世話し、ボンは笑顔を見せるようになりました。アイドッグ・レスキュー隊が主催する「里親会」にも参加し、他のワンコたちとも積極的に交流しました。
目が見えないにもかかわらず、ボンはドッグランを自由に走り回ります。さまざまな障害を乗り越え、心からうれしそうな姿を見せるボン。その姿に、関係者たちは勇気をもらいました。
■サイトの情報は「募集中」のまま
しかし、里親募集が始まってもなかなか縁が結ばれず、サイトの情報は「募集中」のままでした。過去にアイドッグ・レスキュー隊から保護犬を迎え入れたAさんは、ボンのことを気にかけてくれていました。ある日、「なかなか募集停止にならないボンを迎え入れたい」と申し出ました。Aさんは他の希望者たちに対して公平さを保つため、一般の里親希望者として申し込みをしました。
最終的にAさんが選ばれ、ボンはAさんの新しい家族となりました。Aさんの家に来たボンは先住犬とも仲良くなり、毎日の散歩やご飯、寝るときも一緒に過ごします。目が見えないボンですが、Aさんや先住犬の愛情をたっぷり感じ取り、今日も幸せに過ごしています。
紆余曲折を経て、辛い過去や苦しい手術を乗り越え、幸せをつかんだボン。明るく幸せなともしびは、残りの犬生に差し続けることでしょう。
(まいどなニュース特約・松田 義人)