市民が乗れない京都市バス、夜でも「遅延」「混雑」の理由とは?…「運転士さんが気の毒」
「祇園祭」が始まり、京都市内では夏の観光ラッシュが始まった。このタイミングに合わせて、京都市交通局では2024年6月より、とくに観光客で混雑するJR京都駅と「東山エリア」を結ぶ「観光特急バス」を週末限定で導入。バスの運転士不足が深刻な一方で、増加し続ける観光客の利用により、「市民が乗れない京都市バス」の混雑や遅延の緩和を目指すという。
そんななか、「京都市バス」の混雑や遅延が解消されない「真の理由」と思われる衝撃的なポストが、X(旧Twitter)で話題になった。
■夜でも「京都市バス」が遅延し、赤字運営が続く理由
「渋滞もないのに、何故に夜半の市バスが遅れてくるのか。おわかりいただけますでしょうか。ど か さ な い、降 り ら れ な い、時 間 が か か る」
「運転士さんが気の毒なのです…」
そうつぶやき、衝撃的な写真を投稿したのは、龍谷大学文学部教授の井上学 (@kasobus)さん。
投稿された写真に写っていたのは、夜間でも通勤ラッシュ並みに混雑する市バス車内の様子。だがよく見ると……写真に写る乗客の数は10名ほど。つまり、満員なのではなく、他の客が「降りられない」ほど車内を占有しているのは、乗客が持ち込んだ大量の「大型スーツケース」! 明らかに「運賃」にも見合っていない状況に、多くの憤りの声が寄せられた。
「京都の公共交通機関はヤバいことになってると聞いてはいたけど、これは…」
「※京都行きたくない理由」
「円安でビンボーインバウンドが増えた弊害」
「イヤホンしてスマホに齧り付いて…運転士がマイクで移動を促しても全く動かない」
井上先生にお話を伺ったところ、写真は京都駅発の京都市バス車内の様子であり、写真に写る「スーツケース集団」は「海外からの観光客」だったという。
■大型荷物を理由に、「無賃乗車」する海外観光客も
「京都市や京都市バスが、『大型荷物のバス車内への持ち込みはご遠慮ください』という掲示を始めてからは、『大型スーツケース』の利用者は目に見えて減少しました。しかし、宿泊先への移動のためか、夜になると『大型スーツケース』をバスに持ち込む人が散見されるのが現状です。私が最も驚いたのが、バス車内後部の通路の段差に腰をかける人や、バスの中扉(バスの入口)から下車し、そのまま運賃を払わずに行ってしまう海外からの方々でした」(井上学さん)
京都市バスは、バスの中扉から乗車し、バス前方の扉から降車する際に運賃を支払う「後払い」方式だ。そのため、運賃を支払わずにバスの中扉から勝手に降りていく「海外からの観光客」も少なくないという。
■不足する「バス運転士」への負担増加も「観光混雑」による課題のひとつ
京都市交通局では現在、ハイシーズンを中心に、「京都駅」や「金閣寺道」などの訪日客が集中するバス停に「案内人」を配置したり、注意喚起の看板などを設置。また、市バスの入り口には、日本語・英語・中国語で書かれた「大型手荷物のバス車内持ち込み禁止」を訴える注意喚起のステッカーを貼るなど、混雑緩和の対策を行なっている。
「あくまでも私が見た印象ですが、少なくとも昼間の大型手荷物の持ち込みは大きく減少しており、ステッカーや掲示物による注意喚起には一定の効果があると考えています。観光の魅力のひとつとして、”自身の居住地と異なる文化を体験する点”があります。そこでは、異なる文化に対する敬意や理解と尊重が求められるでしょう。しかし、なかにはそのような視点を無視する方も一定おられます。
そういう方々はどのような注意喚起をしてもそれらに気づこうとしないでしょう。大型手荷物の持ち込みやその他の課題について、種々の対応策はあるけれども、これ以上、現場の運転士さんの負担を増やすことはできるだけ避けていただけることを願います。バス運転士さんたちの負担の増加も、観光混雑による課題のひとつですので」(井上学さん)
■訪日客の「数」よりも、文化を尊重できる方々を歓迎する方向にかじ取りを!
円安効果で急増したインバウンド客による「オーバーツーリズム」は、京都に限らず全国各地で問題視されている。だが観光庁は、「訪日外国人旅行消費額5兆円」の早期実現を目指し、2025年にはさらなる数の「インバウンド客」を呼び込む計画だ。
「新幹線や特急はるかなど、今後は京都に行くまでの道中で、大型荷物の持ち込みに限らず京都観光モラル(https://www.moral.kyokanko.or.jp/for-tourist)等を発信することを望みます。また観光庁には、訪日外国人観光客について『数』を求めるのではなく、国内の文化に対して敬意を払い、理解と尊重される方を歓迎する方向に強いかじ取りを期待しています。
数のみの増加では、当該地が観光客に迎合したテーマパークの街に変化する可能性が高まります。これまで地域住民が作り上げてきた文化の破壊とも考えられ、これもオーバーツーリズムのひとつと言えるでしょう。オーバーツーリズムと言えば混雑ばかりが注目されますが、文化の破壊が大きな課題である点も、多くの方々に理解いただけると嬉しく思います」(井上学さん)
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)