警察官すら標的に!? 交番にまでかかってくる投資詐欺電話 ますます巧妙化する手口…元警察官が解説

2024年3月11日に警察庁が公表した「令和5年中のSNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について」によると、2023年7月から件数・被害金額ともに大きく増加しています。警察がどれだけ警戒するように呼び掛けても、次々に新しい手法が生まれて対策が追い付かず、時には警察官すら詐欺のターゲットにされてしまう状況です。では、警察すらターゲットにしてしまう詐欺とはどのようなものなのでしょうか。元警察官で現在は警備会社に勤める佐藤清三さん(仮名)に話を聞きました。

■同業者と偽り安心感を…

ー警察をターゲットとした詐欺とはどんなものですか

詐欺師が交番に電話をかけてきて、嘘の投資を誘うものです。実は以前からたびたび署内で問題視されており、注意喚起もされている詐欺なのです。

ー警察でも騙されてしまうのはなぜですか

元同業者だと偽ることで、ターゲットに安心感を与える詐欺の手口がその理由でしょう。やり方は、まず交番に電話をかけ、電話対応してくれる警察官に対して「自分は過去に上位職についていた元警察官である」と伝えてきます。

その際に、警察官しか使わないような用語を使用して会話してくるので、話しているうちに警察官も信じてしまうのです。

ーどのような投資詐欺を誘ってくるのでしょうか

マンションなどへの不動産投資の話が多いです。巧妙な手口で信じてしまった警察官からすれば、上位職だった元警察官からおすすめされる物件と思い込んでいるため、興味を持ってしまいやすいのです。

また警察官は公務員なので、ローン審査が通りやすいという事情もあり、詐欺師のターゲットとして狙われています。

ー実際に被害にあった警察官はいるのでしょうか

詐欺として立件されたという話は聞いたことがありません。ただ警察官が詐欺に遭ったとなると、警察としての説得力が低下してしまう恐れがあるため、もし詐欺に遭った警察官がいても自ら言い出せない可能性もあります。

この手の詐欺電話は、私自身も何度も受けたことがあるので、詐欺師も騙しやすい案件だと考えていることが予想されます。

■オレオレ詐欺…孫が多すぎて混乱したケース

ーでは一般の人をターゲットとした詐欺で、特に被害が多いものはどのようなものでしたか

高齢者を狙った「オレオレ詐欺」や「ロマンス詐欺」はよく被害相談が寄せられていました。ロマンス詐欺では、SNSを使って心に寂しさを抱える高齢者に近づき、巧みな話術でお金をだまし取ります。海外在住の女性に「あなたに会いに日本へ行きたいけど、その間の家族が心配だからお金を振り込んで欲しい」などと言われ、彼女に会いたい一心でお金を振り込んでしまったという男性もいます。

ー詐欺に遭わないためにはどうしたらいいでしょうか

電話による詐欺であれば、一度電話を切って心を落ち着かせることが大事でしょう。詐欺師が電話を使って詐欺をおこなう場合、ターゲットに冷静な判断をさせないために、とにかく急がせて電話で通話したままお金を振り込ませるケースが多いのです。例えば孫からお金を振り込んで欲しいという電話であれば、一度電話を切ってから、着信履歴ではなく電話帳や電話機に保存している番号を使って孫に連絡することは有効な詐欺対策といえます。

しかし私が関わった事件では、この対策がうまく効果を発揮しなかったケースもあります。そのケースは、妻に先立たれて1人暮らしをしている80代の男性がターゲットとなった詐欺で、男性はある日、孫らしき人物から電話で「事業に失敗してしまい、どうしてもお金を今日中に振り込まないといけないから助けてほしい」と切羽詰まった様子で頼み込まれます。

突然の連絡に動揺しつつも不審に思った男性は、一度電話を切って孫に直接電話をかけようと電話帳を調べることに。しかし彼の5人の子どもはそれぞれ家族を作っており、社会人として働く孫が10人以上存在しました。しかも電話をかけてきた人物は名前を名乗らなかったため、どの孫に確認するべきか迷ってしまったのです。

男性が慌てながら電話帳を調べていると、また詐欺師から電話がかかってきたことで、遂に男性は正常な判断ができなくなり銀行に出向いてしまいます。その後、銀行窓口で詐欺の危険性があることを指摘されたことから、私が担当することになり、男性は詐欺被害に遭うことはありませんでした。

ただ事実確認をするために孫全員に連絡をすることになり、事後処理に苦労した記憶があります。

このような混乱を防ぐためにも、普段から家族間で連絡を取り合っておくことも重要です。

またナンバーディスプレイ付きの電話機を使うことも詐欺対策になります。登録していない電話番号からの電話を警戒できるだけでなく、相手の電話番号が分かることで警察の安全相談の際に情報提供しやすくなります。

ーではSNSを利用した詐欺の対策はありますか

SNS詐欺の場合はターゲットの興味を刺激し、自らの意思でお金を振り込むように誘導してきます。そのため「オレオレ詐欺」よりも詐欺だと気付かれにくいのです。また、海外の口座に振り込ませるケースが多く、一度お金を振り込んでしまうと取り戻すことが困難なのも特徴です。

対策としては、相手が実在している人物なのか疑うことが有効といえるでしょう。もしSNSで出会った恋人や友人にお金を振り込んでほしいと頼まれたら、相手の住所や電話番号などをネットで調べてみてください。住所や電話番号が企業のものであるなど、少しでも怪しいと感じた際は詐欺の可能性が高いです。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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