「施設に入るから猫を引き取って」高齢夫婦が託した愛猫→やすらかに虹の橋を渡る 保護猫カフェ「飼い主さんは万が一に備えてほしい」

「施設に入るから引き取ってほしい」

7年ほど前、高齢の夫婦から飼い猫を引き取ってほしいと相談を受けたという保護猫カフェ&老猫ホーム「カフェガット」さん(@cafegatto.neko)。そのエピソードをつづった投稿がInstagramで話題になりました。

飼い猫の名前は、ゴンちゃん。引き取った当時、推定6歳の男の子でした。カフェガットさんはこう振り返ります。

「飼い主さんは高齢者専用マンションのようなところに入る予定だと言われていたと思います。自分たちがゴンちゃんをこれから体力的にお世話できなくなると悟り、その前に…と施設に入る前に引受先を必死に探していたそうです。お引き受けの費用もちゃんと支払ってくださり、『ゴンちゃんをよろしくお願いします』と一緒に暮らしてきたゴンちゃんを私たちに託されました」

■保護猫カフェに来たのは2017年12月、威嚇もせず物静かな猫…心臓の疾患と診断された

庭に迷い込んできたところを保護されたというゴンちゃん。カフェガットさんが引き取ったのは、2017年12月でした。威嚇することもなく物静かでおとなしく、キャリーの中でもじっとしていたとのこと。カフェガットさんは「飼い主さんが鳥とゴンちゃんを一緒に飼っていたそうで、鳥と一緒に暮らせるほどに穏やかでお利口な子だったのだと思います」と話します。しかし、それから1年半後の2019年5月、ゴンちゃんの体に異変が起きて余命宣告を受けたのです。

「ゴンちゃんは突然呼吸困難に陥り、病院へ搬送…肺や胸に水がたまる肺水腫を伴う左心房肥大型心筋症と診断され、6月には余命半年もないだろうと宣告を受けました。酸素室もレンタルしてカフェで見守ったり、西洋医学東洋医学どちらの先生にも診察や往診してもらったりして。また心臓の薬もたくさん飲んでいました。一時期、病状も改善して完全に酸素室から卒業し、みんなのいる『わかば組』での生活へと戻りました。以前のようにごはん待ちをする姿も見られるようになり、まさかこんなにも回復するなんて、と本当にうれしかったです」

2019年2月に入り、担当医から「ゴンちゃんの様子を一度診せに来てください」と言われ病院へ。半日預かりで心エコーや血液検査をしてもらい、心臓の状態が良くなっていることが分かりました。ただ、利尿剤を飲んでいたため腎臓に負担がかかり、そろそろ腎臓は限界にきていると告げられました。

「呼吸数も安定していることから利尿剤の量を減らして腎臓のケアもしていく方向で先生たちとお話ししました。でも病院へ行った次の日から腎臓フードへと切り替えたからか食欲が落ち、その2日後、呼吸数が多くなっておしっこの量も少なく調子が悪くなっていると感じて…再び酸素室を稼働させました。きつそうな表情を浮かべる時もありましたが、目にも力があり、酸素室から出てきて爪を研ぐ姿も見せてくれました。少しずつ食欲も回復。もう少ししたらまたわかば組に戻れるかなと思っていました」

再び回復の兆しが見えたものの、ゴンちゃんの体は病にむしばまれていきました。ある日、カフェガットさんが酸素室のトイレ掃除をしていた時のこと。酸素室から出ていたゴンちゃんはいつも上る爪とぎから降りようとしたのですが、足に力が入らなかったのかよろけて立ち上がれなくなったのです。2月末には、カリカリご飯も食べなくなってしまいました。徐々に病状も悪くなり、食欲も減って表情もきつくなっていきました。

■“愛猫”の死を知った飼い主、祭壇に手を合わせに駆け付けた

そして2020年3月、闘病の末、最期まで頑張って生き抜いたゴンちゃんは虹の橋を渡りました。当時、飼い主さんにもゴンちゃんの最期の様子を伝えたといいます。

「闘病中であることや、その様子はお伝えしていましたので、亡くなったことも飼い主さんに最初にご連絡しました。火葬後、カフェにて一定期間祭壇を設けた際は、(ゴンちゃんの)お母さんは既に亡くなっており、お父さんが手を合わせに来られました。お引き受けした時以来でした。闘病の様子をブログなどにつづっていたこともあり、たくさんの方がゴンちゃんを応援してくれていたのですが、ゴンちゃんの祭壇にお参りに来てくださった方にありがとうございますと、お礼を言われているお父さんの姿が今でも忘れられません」

最期まで多くの人たちに愛されていたゴンちゃん。カフェガットさんのところには、ゴンちゃんの飼い主さんのように施設に入る、引っ越しなどいろいろな事情でおうちの子と暮らせなくなるから引き取ってほしいという相談が多く寄せられるそうです。

「万が一に備えるためには、愛猫を託す先を見つけておくことは必須です。家族や知り合いの場合でも遺言書や信託契約書など書面で残し、口約束でないほうがよいです。周りに託す人がいない場合は、施設などを探しておかないといけません。施設は費用も幅広いですし、お世話の仕方やスタッフとの相性もあります。元気なうちに施設を見に行くことを強くお勧めしています。あとは、2年ほど前から『CafeGatto(カフェガット)』(福岡県古賀市)独自の取り組みで『愛猫たすけあい制度』というものをつくりました。会員になってくださり、CafeGattoを応援してくださることで、飼い主さんの万が一の時は愛猫さんをお引き受けするというものです。いろいろな方法があるので、自分に合ったものを、とにかく書面で残すことが必要だと思います」

    ◇  ◇

■“どうぶつ系行政書士”の保護猫カフェ店主「ペットの猫が飼えなくなった時に備えて相談を受けている」

カフェガットの代表者は「どうぶつ系行政書士」と名乗り、飼い主さんたちから「万が一に備える」ための相談を受けています。

「飼い主さんの万が一に備える相談を受けるために、行政書士の資格を取りました。2012年に行政書士を開業し、飼い主さんの万が一に備えて遺言書を書いたりペット信託契約を作る必要性を発信しながら、ご相談を受けてきました。その中で、猫の飼い主さんが、『万が一の時に愛猫を託せる相手がいない』というケースが多いことを知り、考えた挙句、自分で施設をつくることにしたんです。それがCafeGattoになります。2016年にオープンしました。

もともと保護活動をしていたので、自分たちが保護した猫たちとともに、飼い主さんの万が一に飼えなくなった場合にお引き受けし、里親さんが見つかるまでお世話をしています。ただ、病気だったり性格的にカフェで知らない人がたくさん来る環境がストレスになる子もおり、そういった子はカフェの表には出ず、療養組として終生お世話をしていきます。この部分が老猫ホームの機能です。

とはいえ、まだまだ飼い主さんの万が一の備えは不十分で、亡くなったとか飼えなくなったという段階で『引き取って』という連絡が多いのが現状です。責任を持って愛猫さんをお世話していくためには費用もかかりますし、飼い主さんが居なくなった状態では愛猫さんの情報(どんな性格でどんな病気をしてなど)も分からないまま。環境に慣れてもらうまでに時間も要します。年齢に関係なく、猫と暮らす飼い主さん誰もが突然万が一のことが訪れるかもしれない。万が一の備えは元気な時だからこそできることなのでこれからも発信していこうと思っています」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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