仕事で熱中症…昨年だけでも31人が亡くなっている現実 「まさかこんな曇りの日に」「忙しすぎて水を飲む暇もなく」危険を感じた体験談

暑さによる熱中症が心配されるシーズンになりました。イベント会場や学校行事などで熱中症を起こし、救急搬送されたというニュースを見聞きすることがありますが、実は「仕事中」に熱中症になる方も少なくありません。昨年だけでも、なんと31人もの方が仕事中の熱中症が原因で命を落としています。

そんな危険な「仕事中の熱中症体験」を聞いてきました。あなたの職場の安全性を考える参考にしてください。

■まさかこんな曇りの日に

Aさん(関東在住、40代、事務職)が職場での熱中症でダウンしたのはまだ6月の梅雨入りのころでした。その日は雲がかかり、日差しは強くなかったものの、雨が降る前のとても湿度が高い状況でした。

Aさんは職場の倉庫から古い資材や書類を搬出する作業に駆り出されました。ほこりっぽい倉庫での作業だったため、マスクと軍手を着用して作業をしていましたが、次第にのぼせたような状態になってきました。前日に友人と遅くまで電話をしており、いつもより2時間遅く寝たことも影響したかもしれません。

Aさんは体調不良を起こしたとき、「貧血かも」と感じたそうです。「まさかこんな曇りの日に熱中症になるなんて」と思い込んでいたのです。顔が真っ赤になっていることを他の同僚に指摘されるまで、蒸し暑い倉庫の一角でうずくまっていました。

その日は結局家族に車で迎えに来てもらって早退し、頭痛と吐き気で内科に寄ったところ「熱中症」と診断されたそうです。

「もう少し放置していたら、救急搬送でも間に合わなかったかもしれません」と言われてゾッとしたAさん。それからは曇りの日でも、小まめな水分補給を欠かさないようにしています。

■送風口は先輩が独り占め状態に

中華料理店のキッチンでアルバイトを始めたBさん(関西在住、20代、アルバイト)の担当はキッチン。すでにカットされた冷製メニューを皿に盛りつけたり、皿を洗ったりする仕事をこなしていました。

空調設備はあるものの、常に火がついている焼き場や鍋の周りはさすがに「熱風」状態。そのため、鍋をふるスタッフにピンポイントで冷風を当てる送風口がありました。

ある日のこと、病欠した人がいたため、普段は2人で担当する焼き場と鍋を1人で担当しなければならない日がありました。なぜかそんな日に限って、ランチタイムに店は大混雑。Bさんも普段は担当しない鍋の横に立って、野菜を用意したり次の皿を出したりする仕事を指示されました。熱気の中、夢中で鍋を振る先輩スタッフには冷たい風が当たっているけれど、Bさんにはその風は届かず…。次から次へと指示も飛んできて、水を一口飲む暇すらなかったそうです。

幸い忙しい時間は1時間もかからず終わり、涼しいホールでひと息つけたため大事にならずにすみました。しかし「あのままもう1時間作業していたら、絶対に熱中症になっていた」と今でも思い出すそうです。

■熱中症リスクの高い危険な職場の特徴とは?

厚生労働省が発表した2023(令和5)年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、熱中症による死亡者は建設業(12人)や警備業(6人)で多く発生しています。

熱中症で死亡災害に至ってしまった職場では、多くの事例で暑さ指数(WBGT:気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数)を把握せず、予防のための従業員教育を行っていないことがわかっています。

毎日暑い環境で仕事をする職場では、「WBGT指数計」が置かれているか、熱中症の予防や啓もう活動が行われているか、ぜひチェックしてみてくださいね。

【参考】

▽厚生労働省/令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します

◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。

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