道端で倒れていた元飼い猫は全盲 「ぼくはここにいるよ」 ケージの中で懸命に鳴く姿に保護団体メンバーの心は揺れた
2024年初め、茨城県の道端で茶トラのオス猫が発見されました。その猫は全盲で、両目の眼球がありませんでした。しかし、薄汚れた「ノミ取り首輪」をつけており、元飼い猫であったことが想像されました。
収容された茨城県動物指導センターでは、一定期間家族からの迎えを待ちましたが、連絡はありませんでした。後に「ぴっちょん」と名付けられたこの猫は、猫エイズキャリアであることも判明し、専用ケージに収容されました。
■自分を見落として去っていかないように鳴いていた
センターを訪れた保護団体・Delacroix Dog Ranchのボランティアさんが、ケージの前に現れると、ぴっちょんは気配を感じ、一生懸命に鳴いて自分の存在をアピールしました。「僕はここにいるよ」と訴える姿に心が引きつけられました。
ボランティアさんはここに至るまでのぴっちょんの猫生を想像しました。大好きだったであろう飼い主と離れ離れになり、ひとりぼっちで彷徨い、他の外猫だけでなくカラスや野生動物の脅威からも身を守り、どうやって生き延びたのでしょうか。
そして今、センターのケージの中で、近くにいる人間の気配を察してニャーニャーと何かを訴えています。
多くの困難に直面していたにも関わらず、人間に対する信頼を失っていませんでした。この姿を見てボランティアさんはぴっちょんを引き取ることを決意。「これから一緒に幸せを目指そう」と声をかけ、そのまま連れて帰りました。
■視覚を失ったことで他の器官が研ぎ澄まされている?
新しい生活を始めてみると、ぴっちょんは視覚を失ったことで他の感覚が研ぎ澄まされているかのようでした。空気の振動を感じ取り、空間の把握をする姿は驚きでした。高いところにも登り、おやつを見つけてこっそり食べるイタズラも見せてくれました。
何よりもぴっちょんが愛らしいのは、人に対して全く臆することなく甘えてくるところです。超がつくほどの甘えん坊で、ふれあうたびにみんなの心を温かくさせました。
ただし、ボランティアさんの家には大型犬が複数暮らしているため、ぴっちょんは小さな「猫部屋」での生活を余儀なくされています。ボランティアさんは「ぴっちょんを広くて自由な環境で過ごさせてあげたい」と考え、里親募集を開始しました。
譲渡のハードルは高いことは承知の上です。それでも「ぴっちょんにぴったりの家」を諦めず、里親希望者の申し出を待つ日々です。
ぴっちょんは相変わらず元気に過ごしています。こんなにかわいい全盲の猫生の新たな生活がさらに彩られることを、みんなが心から願っています。
(まいどなニュース特約・松田 義人)