「どうして習い事ができないの?」…子どもに体験活動をさせられないひとり親家庭の実情が明らかに
ひとり親家庭を対象としたフードバンク事業『グッドごはん』を運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(東京都大田区)は、このほど「低所得のひとり親家庭の子どもにおける体験機会の状況」に関する調査結果を発表しました。同調査によると、主に経済的理由で子どもに体験活動をさせることが難しい実情が明らかとなり、子どもたちが周囲との体験の格差に直面し、苦しむ声が多く寄せられたそうです。
調査は、同事業を利用する首都圏(主に東京・神奈川・埼玉・千葉)、近畿圏(主に大阪・京都・兵庫・奈良)、九州圏(主に佐賀・福岡)在住の6~17歳の子どもをもつひとり親3137人(「ひとり親家庭等医療費受給者証」を有する保護者)を対象として、2024年6月にインターネットで実施されました。
調査の結果、ひとり親家庭になって以降に「子どもに体験活動をさせる頻度が減った」と答えた保護者は76.7%(かなり減った55.9%、やや減った20.8%)にのぼりました。
また、「子どもに学校の外での活動を体験させることに対して、どの程度の難しさを感じていますか」という質問に対しては、19.7%が「非常に難しく、全く体験させていない」、51.0%が「やや難しく、あまり体験させていない」と回答しています。
「子どもに学校の外での活動を体験させていない」と答えた人にその理由を複数回答可で聞いたところ、「それらの体験をさせるための経済的余裕がないため」(89.4%)と「それらの体験にかける時間的余裕が保護者にないため」(61.1%)に回答が集中しました。
次に、「子どもが直近1年間に一度も体験していない学校の外での活動」について、「習い事(スポーツ等のクラブ・チームへの所属含む)」「旅行」「自然体験」「文化芸術体験」の中からあてはまるものを複数選択可で選んでもらったところ、「自然体験」(65.2%)や「旅行」(64.7%)が高い割合で選択されました。
また、選択肢に挙げられた体験活動すべてを選択した保護者は18.1%と2割に迫り、体験の種類が限られることで、子どもが豊かな感情や幅広い能力を養う機会が不足することが懸念される結果となりました。
■体験格差に直面する子どもたちは…
なお、自由記述で寄せられた回答から体験格差に直面する子どもたちの様子が浮かび上がりました。
【周りとの格差に苦しむ子ども】
▽周りのお友達はスイミングやピアノ、ダンスなど習い事をしている子がほとんどなので、「どうして私は何も習い事ができないの?」と聞かれることがある。
▽たまにどこかに出かける提案をすると、その体験自体を喜ぶのではなく、友だちに自慢できる、友だちと対等になれる、という事を喜ぶようになってしまった。
▽学校の先生に「お休みどう過ごしてた?」と聞かれても うちの子達だけ「どこにもいってない」という話になり「何で、〇〇君はお出かけできないの?」とまわりの友達から言われとても恥ずかしかったという話を聞いた。
【子どもの人間関係に影響も】
▽お友達家族に遊園地に誘われた、子供だけ一緒に連れて行ってくれると言われたがお金がないので断るしかなく、友達関係が良好に築けないと子供に言われた。
▽着ていく洋服がなく、友達に誘われても外食をするお金や交通費などもないため断る事が多く、孤立している。
▽体験をさせられないどころか日々のお小遣いもナシ、おやつもナシ、自転車すら買ってあげられないため、お友達と遊ぶ時に馬鹿にされたり、お小遣いがないので遊んでいる途中におやつを買えないことを理由に仲間はずれにされてしまう。
【長期休みに一層深刻化する体験の格差】
▽夏休みの絵日記の宿題が地獄です。書くようなお出かけはしないし、みんなの旅行の話を聞いて、どこへも連れて行ってもらえない自分がみじめになるようです。
▽連休になると他の家庭は旅行や遠出をするみたいで公園から友だちがいなくなり、子どもが公園しか行けていないことに申し訳なく思います。
▽年に一回くらいは旅行やキャンプなど体験させたいとは思いますが、5年以上行けていません。夏休みや冬休みなどの長期休暇でお友達との話が合わないことに不満をこぼされ申し訳なさと辛い気持ちになることがあります。
◇ ◇
調査を実施した同社は、「”体験”は食事や睡眠などと違い、不足しているからと言って生命の危機にさらされるものではありませんが、体験を通して得た他者との関わり方、自分の興味や才能への気づき、問題解決能力などは、複雑化・多様化する社会を生き抜くために欠かせない原動力となります」と説明。
そのうえで、「家庭環境により体験機会が制限されることのないような公平な仕組みづくりや、困窮家庭が基本的な生活物資等のサポートを受け家計が改善する分子どもの体験に必要な支出を賄うようにできる支援など、具体的な対策を講じながら、長期的な視点で子どもたちの体験機会を支えることが必要だと考えます」と述べています。