【瀬戸内海だけじゃないよ】実は海沿いにも山沿いにも…全国に広がる地名がルーツ 瀬戸康史・名字の秘密

先月までTBS系「くるり~誰が私と恋をした?~」に出演していた瀬戸康史。映画やドラマの主演も多いほか、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では主人公北条義時の異母弟時房役をつとめていた。

この「瀬戸」という名字のルーツはなんだろうか。「瀬戸」というと、瀬戸内海を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、「瀬戸」のルーツは瀬戸内海には限らない。

「瀬戸」の「せ」は「狭(せ)」で、狭い場所のこと。「と」は両側からはさまれて狭くなっている所を指す。つまり、「せと」とは両方から陸地がせまっている場所のことで、一般的には両側に山の迫った海峡を指すことが多かった。

今でも、広島県呉市の本土と倉橋島の間の狭い海峡を「音戸の瀬戸」と呼ぶなど、地名として使われているところも多い。

瀬戸内海とは、早鞆ノ瀬戸(関門海峡東部)、速吸瀬戸(豊予海峡)、友ヶ島水道(紀淡海峡)、鳴門瀬戸(鳴門海峡)という4つの狭隘な瀬戸に囲まれた内海(うちうみ)という意味だ。

さらに、こうした海峡だけではなく川の瀬の幅が狭くなった所も「せと」といった他、両側に山が迫っている狭い谷間も「せと」といった。

「瀬戸」という地名で最も有名なのは「瀬戸物」の産地、瀬戸市だろう。瀬戸市の中心部は愛知県北東部の山に挟まれた谷間にある。つまり、「瀬戸」は海沿いにも山間部にもある地名である。

実際、「瀬戸」という地名は青森県から鹿児島県まで全国各地にあり、「瀬戸」という名字もこうした各地の地名をルーツとして生まれた。

従って「瀬戸」は全国ランキングで459位というメジャーな名字で、沖縄を除いて全国にまんべんなく分布している。とくに、神奈川県、宮城県、石川県に多い。

なかでも、神奈川県山北町では町で最も多い名字が「瀬戸」である。山北町には酒匂川沿いに「瀬戸」地名があり、ここをルーツとして南足柄町や開成町にかけて「瀬戸」という名字が激しく集中している。

瀬戸康史の出身は福岡県。福岡県にも糸島市や桂川町に「瀬戸」地名があり、いずれも山に挟まれた谷間の地形。県内の「瀬戸」さんは地名のある糸島市に最も多いが、それ以外にも県内に広く分布している。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。

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