涙を浮かべる元繁殖犬のプードル 酷使された体にはいくつもの乳腺腫瘍と重い皮膚病 手術と治療と愛情で笑顔を取り戻した
推定8歳ほどのプードルのメス・リルは「元繁殖犬」。2024年春に茨城県動物指導センターに収容されたワンコです。
収容時のリルは、伸びっぱなしの毛が全身を覆い、犬種はもちろん性別すらわからない状態でした。職員がカットし、初めてメスのプードルとわかりましたが、目には涙が浮かび、生きる気力を失ったかのような表情でした。その体にはいくつもの乳腺腫瘍と重い皮膚病がありました。
■動物病院に連れて行くと「即入院」
「助けてあげなくては」とリルを引き出したのが犬保護団体restartdog LIEN (以下、リアン)。ボロボロの体をなでてあげると毛が抜けてしまいました。
さらに急性膵炎も発症。動物病院に連れていくと診断は「即入院」。少しでも遅れたら命を落としている可能性もあったそうです。24時間点滴を打ち経過観察をすることになりましたが、リルの体はそれほど重篤な状況だったのです。
■生体販売の裏でボロボロになって放り出される母犬いる
保護メンバーは、なんとかリルの命を救えたことを喜びながらも、同時に強い憤りを抱きました。
「ペットショップで売られているワンコはかわいく映りますが、その裏ではこんなふうに体を酷使され、ボロボロになって放り出される母犬がいる。許されることではないです。『買う人がいる』から『売る人がいる』。そして、ペットショップや悪徳ブリーダーの実態を『知らない』ということも、結果的にリルのような不幸なワンコを生み出していることを、多くの人に知ってもらいたいです」
■やがて笑顔を浮かべてくれるようになった
動物病院での適切な医療ケア、献身的な世話を受け、リルは入院後数週間でみるみる元気を取り戻してくれました。そして、後には複数の手術を実施しました。
保護メンバーは、度々リルのお見舞いに訪れましたが、リルは「この人たちに救ってもらったんだ」と理解したのか、笑顔を浮かべてくれるようになり、後ろ足だけで立ち前足で「遊んで遊んで」とアピールしてくれるようにもなりました。
心を開いてくれたリルを前に「本当に良かった」と喜ぶメンバー。でも、今は治療が最優先です。「もう少しがんばってね。健康を取り戻したら一緒にいっぱい遊ぼうね」と声をかけました。
■退院後はワンコらしいヤンチャな姿を見せてくれた
保護から3週間ほどでリルは無事に退院。大手術を終えたばかりでも、預かりボランティアさんの家ではすぐにエサをモリモリ食べ、元気よく鳴いて、この家にいる先住犬にちょっかいまで出しました。
この月齢になるまで自由が許されず、望まない出産を繰り返されたことを考えれば、多少のヤンチャや粗相も元気になってくれた証しです。リルが苦境を乗り越えワンコらしく過ごす姿に周囲の人たちは勇気をもらっています。
今後もしばらくは治療が続くため、リルの里親募集は先になりそうです。でもその明るさと生きる力で、幸せな第二の犬生をつかんでね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)