阪急電車が有料座席サービス「PRiVACE」導入 座席のクッション性などにこだわり

輸送が目的の電車に、快適性がより求められるようになったのはなぜだろう。

有料座席サービスの先陣を切ったのは、京阪電鉄が2017年8月に導入した「PREMIUM CAR」(プレミアム・カー)。座席の快適さはもちろん、コンセントと無料Wi-Fiも完備。人気も上々のようで、京阪電鉄は2023年度から2025年度までの中期経営計画の中に「PREMIUM CAR」の拡大を盛り込んでいる。

そんな中、阪急電車京都線でもついに有料座席サービス「PRiVACE(プライベース)」が導入された。阪急電車といえば、個性派ぞろいの関西私鉄各社の中でも「高級」「美しい」といったイメージだ。どのような仕様なのだろうか。担当者に話を聞いた。

ーー有料座席設置の経緯は?

有料座席自体は既に同業他社で導入されていたため、当社で導入するとした場合の検討は進めていました。そのなかで、お客さまからの非接触や着座ニーズの高まりにお応えするとともに、電車という公共的な場においてプライベートな移動空間という新たな選択肢を提供することを当社独自の価値としました。その価値をお客さまへ新たな選択肢として提供することにより、鉄道サービスの魅力を向上させ、また、沿線価値をさらに向上させることを目的としています。

ーーこだわった部分は?

プライベート感と快適性を兼ね備えた上質な車内空間を目指すこととし、お客さまに長く愛着を感じて頂いている当社らしい車両で、いかにそれを実現していくか、様々なデザインの比較検討をしていく中で、当社らしい伝統のマルーンカラーの車体、木目調の化粧板、ゴールデンオリーブの座席を継承しながら、上質な空間づくりを進めていくこととしました。

ーー内装外装で上質さを目指したポイントは。

外装では、マルーンカラーを活かしながら、他の車両と区別ができるようにするとともに、中間車両なので、編成として見たときの見え方などにもこだわりました。車内の木目の色調も様々なサンプルを比較しながら選定していきました。特に座席はプライベート感と快適性をお客様に直接感じていただける場所であることから、デザインの検討、座席の試作により、背面や頭部側面の形状や着座した時のクッション性、プライベート感の感じ方などの検証と改良を重ねてきました。

また、車内空間についてもモックアップを製作して、座席と車内空間の取り合わせなどの検証も行い、デザインを決定していきました。その他には、車両中央に配置した乗降用扉の窓ガラスには、ステンドグラスをイメージしたデザインを取り入れるとともに、ライトブラウンのラインで囲うことにより、特別な空間への玄関口としても存在感を強調させました。なお、ステンドグラスの柄は、阪急の「H」を模したデザインとしております。

ーー発表以来、反響は。

発表以来、予約方法や乗車方法等お客さまからお問い合わせを頂戴しており、反響の大きさを感じています。大阪梅田駅・京都河原町駅で実施しました座席体験イベントでは合計9311人のお客様に体験いただき、「待ち遠しい」「早く乗りたい」といった激励メッセージも頂戴しました。一般のお客さま対象の試乗会では12591人のご応募いただいたため、当選倍率が約40倍にもなりました。ご期待に沿えるようなサービスとなるように尽力してまいります。

◇ ◇

7月21日の運用開始日、私は阪急大阪梅田駅へ向かった。PRiVACEの到着時間が近づくにつれ多くのファンがカメラを構え賑わいを見せ、入線すると一斉にシャッターの音が。「PRiVACE」の「P」が目立つヘッドマーク、窓から覗くと座り心地の良さそうな席が並んでいた。

次はこの車両に乗って京都への旅を企画しようと考えながら、よく利用する南海電鉄のラピートのことを思い出した。なんば駅から関西空港まで40分ほどだが、キャリーケースなどの大荷物を持ちながらの乗車は疲れる。ラピートの乗車券さえ購入していれば座席が確保され、テーブルもあるので、コンビニで珈琲を購入すれば移動式のカフェに様変わり。スマホ1台で何でもができる時代だからこそ移動時間を有効活用できる有料サービスは、今後も様々な展開を見せていくのではないだろうか。

(まいどなニュース特約・橋本 菜津美)

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