軽から上級車へ移行したSUBARU インプレッサは難産の末に誕生した 90年代には個性派モデルが続々
今ではSUBARUの代表的モデルとも言えるインプレッサ。実用性とスポーティさを兼ね備えたモデルとして、旧型でも中古車市場でも高値傾向にありますが、実は開発当初は他のSUBARU車との兼ね合いから難産の末に誕生したモデルでした。
■SUBARUの他モデルとの相関の中で開発された
1970年代まではスバル360などに代表される軽自動車を多く発売していたSUBARU。しかし、レオーネ、レガシィといったモデルの誕生後、SUBARU内で軽自動車から上級車への移行という課題が出てきました。この2モデルの排気量はそれぞれ1.6L~2.0Lでしたが、さらに中間車の必要性が高まり、1987年からは、インプレッサの開発が本格的に始まりました。
インプレッサは既存のエンジンに固執せず、「まずは理想的なものを」として画策。新規開発エンジンを使った試作車を使った走行テストまで進行させましたが、途中でレガシィほかのプロジェクトに投資を割くことが決まるなどし、インプレッサの開発は一時中断。後に開発が再開されると、レガシィのプラットフォームをベースに排気量を1.5Lまで縮小させたエンジンの採用が決定。また、当初はセダン1車型のみの予定だった一方、他車との差別化からコンパクトなラゲッジを持つワゴンタイプにすることにし、ようやく誕生に至りました。
「紋章」「金言」などの意味を持つ「インプレイザ」、そして「新鮮な印象」などの意味を持つ「インプレッション」が、インプレッサのモデル名の由来になっています。
発売の翌年の1993年には、フィンランドでのWRC(世界ラリー選手権)に参戦。初参戦でありながら、当時の最強ランチアと首位争いとなり2位に入賞。インプレッサのポテンシャルの高さは一気に注目を集めることとなりました。
■こんな特別仕様車も!?個性派モデルたち
また、特に90年代のインプレッサには個性的な限定受注車や特別仕様車が複数ありました。この点も当時の富士重工業(現:SUBARU)がインプレッサをベースに様々なトライをしていたことを強く感じますが、ここでその個性的なモデルを見ていきましょう。
■限定受注車WRX STi version2(1995年8月)
前年までに発表し反響を呼んだセダンのWRX および WRX type RA STi、ワゴンのWRXをベースに富士重工業(現:SUBARU)のモータースポーツ専門会社・スバルテクニカインターナショナル株式会社(略:STi)の各種専用装備、使用を施した限定受注車。セダンタイプは500台、ワゴンは100台限定での販売。
■特別仕様車インプレッサスポーツワゴン グラベル EX(エックス)(1995年10月)
オンロード・グラベルロード(未舗装路)双方でスポーティな走りを楽しめるワゴンとして設定されたモデル。現在のインプレッサにはない装備が複数搭載されていた特別仕様車。
■特別仕様車インプレッサスポーツワゴン カサブランカ(1998年12月)
“スポーツエレガンス”をコンセプトとした、コンパクトで高級感ある個性的なスタイルのスポーツワゴン。エレガントさと機能性を両立させた存在感のある個性派インプレッサ。5000台限定で市販されました。
■「遊び心」満載の実用性で、乗るだけで楽しい気分に
かなり個性的な特別仕様車、限定受注車をピックアップしましたが、インプレッサの一番のニーズはやはり「日常使い」「レジャーでのアクティブな用途」など。
実用性とスポーティさを両立させていることで、SUBARUならではの「遊び心」を感じさせる唯一無二の存在感を放つモデルになりました。
SUBARU担当者によれば、2023年に発売された最新モデルのインプレッサのキーワードは「FUN」だと言います。
「お客さまはもちろん、開発・製造・販売に関わるSUBARUのすべてを『FUN』にする存在になって欲しい、という思いを込めて開発されました。いわゆるSUVよりも最低地上高が低く、よりスポーティな走りを楽しんでいただけるクルマです。是非インプレッサに乗ってスポーティに、そして気軽に安心してアクティビティをとことん愉しんでいただきたいと思っています」(SUBARU担当者)
筆者個人的には、インプレッサはライトなアウトドアシーンのお供にぴったりのクルマだと思います。一般走行でも運転しやすく、その収納力の高さを活かしてキャンプ道具をバンバン入れて、遠方のキャンプ場までの移動を安全かつ楽に移動できると思います。家族連れ・個人双方ともに、乗るだけで楽しい気分にさせてくれるインプレッサ。さらなる進化にも期待大です。
(まいどなニュース特約・松田 義人)