収容されたシニア犬 飼い主も保護主の名乗りもなく殺処分対象に 絶望の淵から救われ第二の犬生目指すよ

冬のある日、福岡県動物愛護センターに1匹のビーグルの血統が入っているおぼしきシニアのメスのワンコが収容されました。後に付けられた名前は「イチ様」。なんらかの経緯から飼い主とはぐれて捕獲されたワンコの場合、飼い主の名乗りがあるはずですが、全くありません。イチ様はシニアにして意図的に棄てられたのだと思われました。

■ビーグルかと思いきや足が短い。ダックスの血も入っている?

センター収容中、イチ様には保護団体、保護ボランティアなどから引き出し希望もなく、ついにはセンターの収容期限が切れ殺処分対象となりました。

過去の経緯はわからないものの、シニアにして棄てられ、不安を抱えながら彷徨った挙句に殺処分というのはあまりに悲しすぎます。イチ様の存在を知ったボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)のメンバーは、殺処分対象となったと聞き、すぐにセンターを駆けつけ、その命を救うことにしました。

対面したイチ様は、確かに老体ではあるもののテクテク元気に歩きます。その脚はビーグルの血が入っているはずなのに何故か短め。もしかしたらダックスの血も入っているかもしれません。

ともあれ、こんなに元気なワンコが殺処分を受けずに済んだことを喜び、そしてはぴねすと提携する預かりボランティアさんの家でしばし世話を続けることにしました。

■エサに対する異常な執着から考えられる過去

動物病院へと連れていき、健康状態を細かく診てもらいました。検査の結果はフィラリア陽性。しかし、心臓には虫が見つからず、もしかしたら感染して間もないようにも考えられました。まずは「善は急げ」とボルバキア治療をスタート。今後は経過観察することになりました。

これ以外は問題なしのイチ様。普段の散歩も上手に歩くことができ、トイレも外でもシーツでも上手にすることができます。このことからもやはり飼い主の元で過ごしていたように考えられるイチ様でしたが、一つだけ問題がありました。

それは食べ物に対する執着で、エサをずっと探し続けることでした。棄てられ、どれほど彷徨っていたのでしょうか。食べ物にありつけず、常に探し続けていた過去のイチ様の様子も、ここで強く感じることができました。

■人間や他の動物とも争うことなく接することができるお利口さん

辛かったであろうイチ様の過去を思うと胸が苦しくなりますが、それでもイチ様はいつもルンルン。短い足でちょこちょこと歩き回り、人間はもちろん、他のワンコや猫とも争うことなくコミュニケーションを取ることができます。

確かにシニアで、フィラリア陽性ではあるイチ様ですが、これだけ元気で性格良好のお利口さんなら、きっと「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れるだろうと、程なくして里親募集が始まりました。

大好きだったであろう元飼い主から棄てられ、一時は殺処分の淵に立たされたイチ様。その暗い過去を吹き飛ばすほどの幸せいっぱいの日が、近い将来に訪れることを願うばかりです。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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