奈良の鹿がアンパン入りのビニール袋を食べようと…取られないように活動家が注意喚起 鹿を蹴るなどトラブル多発、観光客のマナーに懸念
「雄鹿がビニール袋に入ったままのアンパンを必死で食べようとしてました。
事情はよくわかりませんが女性二人組の観光客が取られてしまったようでした。何とか取り返せましたが袋ごと全部食べてしまってたらと思うとゾッとします。鹿に食べ物等を取られないよう十分注意して頂きたいです。」
奈良市内の県立奈良公園付近で歩く際、近寄ってくる鹿に持っている食べ物などを取られないよう注意喚起する投稿がX(旧Twitter)で話題になりました。
投稿したのは、普段から公園を歩きながら鹿たちの環境を改善させようと活動をしている川地祥介さん(@ncbutwDsL0UC6np)。最近外国人も含め、奈良公園に訪れる観光客が増えてきたとのこと。7月下旬には外国人観光客と見られる男性が奈良公園付近の歩道で鹿を執拗に蹴り飛ばす動画がSNSに投稿され、批判の声が上がるなど観光客と鹿のトラブルが取りざたされました。
そんな中、川地さんは公園内で女性二人組の観光客が持っていたアンパン入りのビニール袋を鹿が取ってしまい食べようとしていたところを目撃。観光客は鹿がビニール袋ごと食べようとしているのを取り上げようともせず、ただ鹿を見ているだけ…そこで川地さんが鹿に駆け寄り何とか取り上げたといいます。目撃したことをつづった投稿には、安堵のコメントが寄せられています。
「よほどお腹が空いていたんじゃないですか?ビニール袋は食べなくて良かったです」
「鹿が袋ごとパンを食べたら死ぬよ」
「今じゃそんなことしないのかな?遠足に行って若草山でお弁当、取られないように先生から注意された。箕面の猿も目を合わさないように、食べ物見せたら終わり」
「観光客規制してほしい」
「見つけて頂き、難を逃れて良かったね、鹿さん 人間が注意しなくてはいけませんよね」
多くの人たちが関心を集めている観光客と奈良の鹿のトラブル問題。奈良公園付近の鹿たちの現状について、川地さんにお話を聞きました。
■交通事故、ゴミの誤食…奈良公園の鹿がおかれている現状とは?
──奈良公園を歩き始めたのは。
「奈良公園を歩きだしたのはもう随分前でいつ頃からか忘れましたが、歩いているうちに奈良公園の鹿のおかれてる現状を知るようになりました。活動を始める大きなきっかけになったのは、2021年10月に起きた近鉄奈良駅前で雄鹿が車にはねられた現場にいたことです。この鹿ははねられた後、もうろうとしながら自力で歩き何とか車の来ない中央分離帯に座りこみました。その後愛護会さんに保護されましたが3日後に亡くなりました。それから交通事故やゴミの誤食など奈良公園の鹿がおかれている現状をさらに知り、そのことを憂えてる方々と知り合うようになり奈良公園へ行く頻度が増えてきたんです」
──今回の鹿がビニール袋に入ったままのアンパンを必死に食べようとしていたという投稿。鹿は食べずに無事だったとのことですが、こうしたゴミも含めた誤食の問題について、最近海外からの観光客も増えてマナーを知らず鹿が誤食してしまう事例が増えているのでしょうか?
「奈良公園にはほぼゴミ箱がないためポイ捨てが多くゴミを食べ物と間違って食べてしまった鹿が命を落とすということが起こっています。それを少しでも防ぐため多くのボランティアさんがゴミ拾いをされています。よく捨てられてるのはファーストフード店のカップやお菓子の袋、ウェットティッシュ、ペットボトル、アイスの包み、吸い殻、パンフレットなどで特に食べ物のにおいの付いた容器や袋は鹿の命にかかわりますので絶対に捨てないでいただきたいです。ウェットティッシュは靴に付いた鹿の糞をふき取ってそのまま捨てていく人を見かけます。先日は鹿をわざわざおびき寄せてゴミを投げ与えるというあまりにもひどい行為をする観光客もいました。
また故意にでなくても鹿せんべいを入れてるビニール袋やお菓子などを袋ごと鹿に取られてしまう場面もよく見かけますので注意していただきたいです。このゴミ問題ですが先日の県議会でも取り上げられ対策が少し動きだしたようです。他の観光地ではいっぱいになったゴミ箱を圧縮できるスマートゴミ箱が試験的に導入されていて、奈良公園でも設置されれば効果が期待できるのでないかと思います」
■鹿を蹴り上げる行為に「文化財保護法違反」と苦言、公園付近のパトロール強化へ
──最近外国人観光客と見られる男性が、奈良公園付近で暮らす鹿を歩道上で執拗に蹴り飛ばしている姿を映す動画がSNSで話題になり、問題になりました。こうしたトラブルについての率直なご意見をお聞かせください。
「この鹿を蹴り上げてる動画は 信じがたいほどひどい行為でなぜこんなことができるのか理解しがたいです。さっそく対策として県・市・警察などが啓発活動隊を結成してパトロール強化に乗り出してくださいましたので、これを継続していただくのと同時に防犯カメラもあればいいかなと思います。注意喚起としては奈良の鹿は国の天然記念物ですので『文化財保護法違反』になりますよということでしょうか。
この動画ほどひどくはありませんが以前鹿せんべいを目当てに寄ってきた鹿に鹿の顔まで足をあげて追い払おうとする行為を見ました。あと鹿せんべいを焦らしてなかなかあげないのもよく見かけます。中には、怒った鹿が攻撃してきて人身事故につながることもありますので、焦らさずにあげてほしいと思います」
──奈良公園付近の鹿たちの現状と、人と鹿が共存できるような今後の対応策や活動などについて教えてください。
「奈良公園付近の鹿たちの現状については、山下知事が農作物被害などを理由に駆除範囲を広げざるを得ないとの発言をしています。このことに反対する署名活動をオンラインを中心に今年の3月末から行ってきました。その中間報告として約1万4千筆の署名を7月19日に山下知事、仲川市長、村上委員長宛てに提出してきたところです。引き続き署名を集めておりますので柵の設置など被害対策を講じてもらい、知事に発言を撤回してもらうよう取り組んでいきたいと思っています。
交通事故に関しては以前から県庁前の369号線の中央分離帯の芝生の改善や169号線、飛火野前など鹿の横断の多い場所での注意喚起の標識設置や道路ペイントなどを県にお願いしています。さらに、アメリカの高速道路では動物が道路を横断する際、高速下の排水口を動物たちが利用し交通事故が減った例があります。オジロジカも利用していたそうで奈良公園でも応用できないかなと思っています。ほかにも犬の散歩マナーの改善や、水が少ない場所に水飲み場を設置するなど、奈良公園内の鹿が暮らしやすい環境になるよう働きかけをしていきたいと思っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)