バイト学生から「有給休暇ください」発言→店が回らなくなります! 与えないといけませんか?【社労士が解説】
コンビニエンスストアを営んでいるAさんは、人手不足の状況でなんとか人員を確保して日々営業をおこなっていました。人員が確保できている理由は、近隣に大学が多く、大学周辺に住んでいる学生が求人に応募してくれているからです。
ある日、店で働き始めて1年が経過した学生バイトのBさんが「有給休暇を取得したい」とAさんに要望しました。バイトが有給休暇をとることを想定していなかったAさんは、Bさんの要求を拒否します。もしBさんの有給休暇を認めてしまうと、その話が一気に広がり、ほかの学生バイトたちも次々に有給休暇を取りかねないと危惧したからです。そんなことになったら、お店の営業に問題が出てしまいそうです。
Bさんは納得してくれたものの、本当はアルバイトやパートにも有給休暇を与えなければならなかったのか、Aさんは悩み始めます。そこで社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに話を聞きました。
ーアルバイトやパートでも有給休暇は与える必要はあるのでしょうか
アルバイトやパートであっても有給休暇を与えなければなりません。労働基準法第39条にて「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない」と定められており、一定の条件を満たせば有給休暇が与えられます。
ーどのような条件を満たせばいいのでしょうか
付与される日数は、1か月の所定労働日数と1日あたりの所定労働時間によって変わります。「週30時間以上勤務」「週5シフト以上勤務」「年間217日以上勤務」のいずれかを満たす場合、半年以上8割出勤を続けると、年10日以上の有給が付与されます。その後、1年ごとに付与日数は増加していきます。
上記に該当しないアルバイトやパートであっても、「週30時間未満」かつ「週4日以下または年間48日~216日」勤務した人は、半年以上8割出勤すると有給休暇が付与されます。入社後6カ月後の有給日数は、週1シフトで1日、週2シフトで3日など、所定労働日数と勤続期間に応じて決まります。
ー人手不足を理由に店側は拒否することができますか
原則店側はアルバイトの有給休暇申請を拒否することはできません。ただ、有給休暇の概念はあらかじめ設定されている労働日に対して、その日は働かなくても給料が支払われるというものです。月給者の場合は休んでも欠勤控除しない、という有給休暇の処理となりますが、時給者の場合は「有給休暇を取得した日に対して賃金を支払う」という形となりますので、給与計算の際には注意が必要です。
ー実際に付与されている事例はありますか
金額の算出方法は企業によってさまざまですが、アルバイト・パートに有給休暇分の手当を支払っているケースはよく見かけます。実際に私が関わっている企業であれば、有給休暇分をその他手当として支給している場合が多いです。
事前にシフトを調整したうえで、手当として加算する仕組みです。ただし、あくまでも「有給休暇を取得した分だけ賃金が支払われる」という形です。また有給休暇の買い取りは原則認められていないので、混同しないように注意しましょう。
結果的に有給休暇分支給されるという点では変わりませんが「労働日であるが労働の義務が免除された日」が有給休暇であることはアルバイト・パートも経営者も知るべきことだと思います。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)