瀕死の状態で見つかった猫 獣医師は最善を尽くすも「あとは祈るしかない」 小康状態を保つも数日後に別れが訪れた
2024年春、東京都内の公園でワンコを散歩していた近所の方が、瀕死の状態で倒れている猫を見つけました。動くことができず目もウツロ。「これは大変」とすぐに動物病院・たんたんペットクリニックに連絡。「すぐに診ます!」という同院の言葉を受け、急いで連れていきました。
■「いつ死んでもおかしくない」状態だった
この猫につけられた名前はキントキくん。たんたんペットクリニックの獣医師が検査すると、低体温とひどい脱水症状。さらに尿閉を起こしており、尿道、肛門、口の中にはウジ虫がいました。
できる限りの治療を施したものの、自信はありませんでした。それほどにキントキくんの病状は重篤で、「あとは祈るしかない」といった状況でした。
■治療と思いのお陰で少しずつ体調を持ち直し始めた
治療と思いが通じたのかキントキくんはご飯を口にし、翌日にはヨタヨタと立ち上がり、自分の足で歩く姿を見せてくれました。
獣医師は「キントキくんを、さらに歩きやすい場所に」と、広めのケージに移してあげました。すると自分で体勢を変えたり、顔をあげたりするようにもなりました。
「良かった。キントキくんのペースで良いから、美味しいものをいっぱい食べて元気になろうね」と声をかけてあげ、しばらく医療ケアと世話をすることにしました。
■発作を起こし、そのまま虹の橋を渡っていった
それから数日間、劇的な回復こそみられませんでしたが、少しずつ動きが機敏になり注射をしようとすれば嫌がる素ぶりも見せるように。
本来なら大事な注射を嫌がられるのは困りますが、獣医師は「キントキが元気になった証拠」とむしろうれしく思いました。
保護から6日経過した日、お昼に自力でスープを飲み、満足そうな表情を浮かべていたキントキくんでしたが、夕方に発作を起こして倒れました。どうも尿毒症によるものとみられました。あらゆる医療処置を施し、意識が回復することに望みをかけましたが、キントキくんはそのまま虹の橋を渡っていきました。
■「善かれと治療したことが苦しみを長引かせたのではないか」と自問自答
獣医師は複雑な心境になりました。
何が正解だったかがわかりません。人間が「善かれ」と治療したことでキントキくんの苦しみを長引かせてしまったのではないか、と。それでも、今後同じような状況の犬猫には、獣医師である以上は全力で同じように治療するだろう、とも考えました。
筆者は、獣医師の選択や考えに誤りは全くないと思います。瀕死のキントキくんに最善を尽くしてくれたことに、敬意と感謝を抱くばかりでした。そして、ひとりぼっちで苦しんでいたところ、人間から愛情を受けて旅立ったキントキくんは、虹の橋の向こうで喜んでくれているだろうとも思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)