台風、火災…戦禍を乗り越え140年、15歳が創業したバッグ店「少女の店」が閉店へ 先代たちが継いだ思いとは

 1885(明治18)年に創業した表町商店街(岡山市)のバッグ店「sunami(すなみ)」が9月末で姿を消す。140年近く前に15歳の少女が創業した店は、台風、火災、戦禍に見舞われながらも再建を繰り返し、多くの人に親しまれてきた。インターネット通販が店舗販売を大きく上回る経営状況から、4代目店主の小野辰也さん(64)が閉店を決断した。

 革やナイロン製のバッグ、財布、婦人服…。店内には品質や流行、顧客のニーズを踏まえたえりすぐりの約200点が並ぶ。中でも老舗バッグメーカーと10年ほど前に共同開発した黒色のフォーマルバッグは根強い人気の品だ。

 「閉店と聞いて、とても驚いた」と40年来の常連客という女性(73)=同市中区。「ブランド品から手頃な品までそろい、小野さんも従業員もみんな温かい。気軽に立ち寄って買い物や世間話を楽しめる場所だったので、さみしくなりますね」と惜しむ。

 小野さんの曽祖母・角南ちかさんが15歳で開業した小間物店が始まり。店名は「一人娘・すなみ」。旭川に架かる京橋(岡山市)付近の繁華街にあり、「少女の店」として人気を呼んだ。山陽鉄道(現JR山陽線)の岡山駅開業などで人の流れが増していた表町に1901年に移転。洋風の化粧品や雑貨の販売も始めた。

 その後、災難が続く。34年の室戸台風で浸水、8戸が焼けた37年の火災で全焼、さらに新築した店は岡山空襲(45年)で表町商店街と共に焼失した。

 それでも戦地から復員したちかさんの次男・小野龍吉さんが、焼け跡にバラックを建てて事業を続け、2代目としてハンドバッグを主力に再建。3代目の小野千鶴男さんは店外での催事や支店開業などで経営を拡大した。

 「先代たちは時代に合った商品を見極めて取り扱い、挑戦を続けた。それが140年の歴史につながったと思う」と現店主の小野さん。自身も先代たちに倣い、2010年ごろからネット販売に注力した。

 新型コロナウイルス禍も追い風となり、現在はネットの売り上げが全体の8割ほどを占める。一方で来店客は多い日でも20人程度。岡山市中区に事務所を設け、ネット販売を中心とした業態に切り替えることにした。

 「一人一人に感謝を伝えたい」と閉店セールで最終日まで客を出迎える小野さん。「表町を離れるのはさみしい。でももっと集客力のある店に入ってもらうことで、長年お世話になった商店街に新たなにぎわいが生まれれば」と願っている。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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