「正規雇用に変更」打診に戸惑う30代工場従業員…「非正規雇用と何が違うの?メリットあるの?」【社労士が解説】
総務省が2024年2月9日に公表した「労働力調査(詳細集計) 2023年(令和5年)平均結果」によると、非正規の職員・従業員として働いている理由として、3人に1人が「自分の都合のよい時間に働きたいから」と答えていました。時間の自由度が非正規雇用のメリットなら、正規雇用にはどんなメリットがあるのでしょうか。
30代後半のAさんは、都内の工場で非正規の従業員として働いていました。与えられた仕事を実直にこなすAさんは、仲間からの信頼も厚く正規の従業員からも頼りにされる存在です。そんな仕事ぶりが評価されたのか、ある日の仕事終わりに工場長に呼び出され「来年度から正規雇用に変更する」と告げられます。雇用形態にこだわりのないAさんは、深く考えず正規雇用のほうがいいだろうと思いこの打診を受け入れます。しかし家に帰ってよく考えてみると、本当に受け入れてよかったのか不安になってしまいました。
正規雇用と非正規雇用の違いはどれくらいあるのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。
ー非正規雇用と正規雇用の違いは何ですか
非正規雇用と正規雇用の違いで一般的にいわれるのは雇用期間の違いです。非正規雇用の場合は、半年とか一年とか雇用期間が決まっています。一方で正規雇用の場合は定年まで働くことが前提となっており、雇用期間に定めはありません。また仕事の内容や給与、福利厚生でも違いが生じます。
しかし昨今では、正規雇用と非正規雇用の間で待遇に差が出ないように「同一労働同一賃金」の導入が進められています。そのため同じ仕事内容であれば、待遇面に違いはありません。ただ正規雇用の場合はより範囲の広い責任が求められることが多く、その分給与が高くなる傾向にあります。
例えば工場のライン作業に入っている場合、非正規雇用の従業員は指示に従って作業を実施すればいいところ、正規雇用の場合は作業のほかの社内業務をおこなう必要があるでしょう。
ー正規雇用で働くメリットにはどのようなものがありますか
雇用期間に限りがなく定年まで働けるという点で、将来に対する不安は少なくなるでしょう。非正規雇用と比べると給与も高くなる傾向にあり、充実した福利厚生サービスを受けられる場合もあります。また社内教育や研修を受けることができるため、自己成長の機会が得やすいこともメリットです。
ーでは正規雇用のデメリットはどのようなものがありますか
会社の人事権が行使された場合、正規雇用の従業員は基本的には拒否できません。例えば今勤めている場所から遠い支店に転勤を命令されたり、今まで開発部門にいたのに営業部門に異動するよう指示されたりしたら、不当な内容でない限り従わなければなりません。また残業や休日出勤も従う必要があり、非正規雇用と比べると自由度は低くなると考えられます。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)