会社の運動会で張り切っていた係長、100m走で肉離れを起こしたのですが…「これって労災はおりますか?」【社労士が解説】

秋になると多くの学校で運動会が開催されます。そして企業によっては会社主催の運動会やスポーツイベントがおこなわれることがあるでしょう。都内のIT企業の商品開発部に勤めている係長のAさんは、会社の行きかえりに20分ほど歩くだけで、日ごろから運動不足でした。ただ年齢はまだ30代で学生時代にラグビーをやっていたこともあり、自分の体力に関してまだ大丈夫だと自信を持っています。

そんなAさんが勤める会社では、毎年秋になると運動会が開催されています。体力に自信を持っているAさんは、今年も活躍する姿を周囲に見せようと張り切っていました。100m走の時間になり、優勝を目指すAさんは入念に準備運動をしたうえでスタートラインに並びます。号砲が鳴り、Aさんは好スタートを切ったのですが途中で太ももの裏を抑えて倒れ込んでしまいます。病院では肉離れと診断され、医者からは労災になるのではないかと言われます。

後日Aさんは労災の手続きをおこなおうとしたのですが、会社からは労災認定されない可能性があると言われてしまいます。会社のイベントでのケガだったのに労災認定されないなんてことがあるのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。

ー会社主催のイベントなのに労災が認められないのはなぜですか

労災が認定される条件は「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要因で判断されます。業務遂行性とは労働契約に基づき、事業主の支配下にある状態で業務をしていたかどうかが見られます。業務起因性は、ケガや病気の原因が仕事にあるかという要件です。

今回、会社主催の運動会で労災が認められなかったのであれば、この業務遂行性を満たしていないと判断されたのだと考えます。つまり会社主催の運動会だったとはいえ、強制性がなく参加するかどうかは従業員の自由裁量だったのではないでしょうか。そのため事業主の支配下にはなかったと判断したと考えます。

ー強制性のある運動会であれば、労災認定されるのでしょうか

会社が全員に参加を指示したのであれば、業務遂行性が認められるでしょう。仮に全員が参加を指示していなかったとしても、参加者にお弁当などの支給があれば、これも事業主の支配下にあったと判断される可能性が高いです。

任意参加で会社からの支給が何もない場合であれば、親睦行事とみなされ、その中でケガをしても労災とは認められないでしょう。

ーでは勤務時間外の会社のクラブ活動は対象となるのでしょうか

勤務時間外のクラブ活動でケガをしても労災認定はされないでしょう。仮に会社の設備を使用していたとしても、事業主の支配下にはないし業務上でのケガでもないため、労災はおりません。

会社主催のイベントや会社関係のクラブ活動に入る際には、そこに強制性があるのかどうかなど事前に確認しておくといいでしょう。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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