「目のやり場に困る…」汗だくで帰社した先輩女性社員の“大胆な服装”に動揺する部下「これってセクハラ?」【社労士が解説】

都内の会社で外回りの営業職をする30代の男性Aさんは、暑い季節になるといつも汗だくで会社に戻ってきていました。Aさんの職場にはほかにも営業職の人が複数人所属しており、Aさんの5つ年上の女性社員Bさんもそのひとりです。そしてAさんは、暑い日のBさんの振る舞いに悩まされていました。

Bさんも他の社員と同様に、いつも汗だくで外回りから帰ってきます。営業を終えて事務所に入ると、ジャケットを脱いでシャツの胸元のボタンを外し、冷風機の前に陣取るのです。手で胸元を広げて少しでも身体を冷やそうとするBさんの姿に、Aさんは目のやり場に困っていました。

見かねたAさんがBさんに注意をするも「そんな目で見るなんてセクハラですよ」と逆にたしなめられてしまいます。それ以来Bさんに注意する人は現れず、振る舞いを改める様子もありません。

Aさんは、Bさんが周囲が困っている服装を続けるのは逆にセクハラなのではないかと感じています。なんとかBさんの胸元を広げる振る舞いを辞めさせることはできないでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。

ーBさんのように胸元を広げる振る舞いはルール違反にならないのでしょうか

今回のケースでは、ルール違反とするのは難しいかもしれません。服装に関してルールを設けるとするならば、就業規則の服務規律のなかで定めることは可能です。ただし、服装、髪型、髭などの身だしなみは労働者の人格に関係するものなので、合理的な理由がないと認められません。

例えば病院で、患者の対応が求められる看護師に対して、服務規律でネイルや香水を禁じるルールは合理的ですが、患者と接することなくデスクワークに従事する事務職員に同じルールを科すことは難しいでしょう。

ーでは薄着で目のやり場に困ることを指摘するのはセクハラに該当するのでしょうか

セクハラと認定されるには「労働条件に関して不利益を与える」または「他の従業員の就業環境を害する」という要件を満たす必要があります。Bさんの薄着を指摘したところで労働条件に不利益を与えたり、就業環境を害したりする行為には当たらないでしょう。したがってBさんの薄着を指摘したとしてもセクハラとは認定されないと考えます。

ー周囲が困っているのに薄着を続けるのは逆にセクハラではないでしょうか

周囲が迷惑しているのに薄着を続けるBさんの態度には問題があるようにも思えますが、ハラスメントというほどの行為ではないでしょう。Bさんが薄着でいることで何か実害が発生しているわけでもないので、会社としても懲戒などの処分も困難です。

ーではAさんは泣き寝入りするしかないのでしょうか

上司に困っていることを伝えて注意をしてもらうくらいしかできないでしょう。可能であれば話し合いをおこない、部内全員で服務規律を見直してルールを決めることも有効です。Bさんを除外して話し合いをするとパワハラといわれかねないので、全員で話をすることが重要です。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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