小脳に障がいを抱えた子猫を家族に 甘えん坊のおっとりさんが静かに旅立つまでの物語
愛知県に住むKさんが出会ったのは、運命の赤い糸で結ばれた1匹の猫、「さすけくん」。その物語は、2022年10月のある日から始まりした。
その日、Kさんは妊娠中の猫を保護した別の家から、生まれたばかりの子猫たちが里親を探しているという情報を受けました。Kさんの家にはすでに里親募集中の猫がいたため、子猫たちも一緒に見学できるようにと預かることに決めました。しかし、その子猫の中には特別な運命を持つ「さすけくん」がいました。
生後1カ月ほどのさすけくんは、最初こそ元気に見えましたが、次第にその歩行に不安定さが見え始めました。転ぶことが多く、最初は足の問題かと思われましたが、診断の結果、小脳の形成が不十分だったことが判明しました。
「その障がいを知った時、さすけには里親を見つけることは難しいと思いました」
その後Kさんは、さすけくんの愛らしい姿と、成長するにつれて見せる不自由さに心を打たれ、里親として迎える決意を固めました。12月、さすけくんは正式にKさんの家族となり、新しい家での生活が始まりました。
初めておうちに迎えられた日のさすけくんは、段ボールに登ろうと必死に頑張っている姿が印象的でした。その小さな体で一生懸命に挑戦し、転ぶこともありましたが、その姿にKさんと家族は心を打たれました。
さすけくんという名前は、茶トラの毛色と、彼の助けを必要とする状況からつけられた仮の名前がそのまま本名となりました。彼の性格は甘えん坊でおっとりしており、満足そうにゆっくり瞬きをする姿がとても愛おしく、家族全員の心をつかみました。
さすけくんとの生活は、普通の健康な猫よりも多くの手間がかかりました。食事の介助やトイレの見守りなどで手はかかりましたが、その時間は家族にとってとてもにこやかなものでした。Kさんの家族は、さすけくんとの毎日を心から楽しみ、彼の幸せな瞬間を共有しました。
2023年6月、さすけくんはその愛らしい姿で家族にたくさんの笑顔をもたらしながら、静かに旅立ちました。彼の短い生涯は、Kさんとその家族にとって、かけがえのないものであり、愛と絆を深める貴重な時間となりました。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)