保健所に持ちこまれたトイプードル 高齢で複数の重い病気 なぜこんな非情なことを こみ上げる憤りと悲しみ
2023年の年の瀬、東海エリアの保健所にトイプードルを抱えた飼い主が訪れました。「やむを得ない事情で飼えなくなったから、保健所で引き取ってほしい」とのこと。そのトイプードルはきれいにトリミングされ、長年かわいがっていたもののやむを得ない事情から手放さざるを得なくなったようにも見えます。
トイプードルの名は「るいくん」。12歳という高齢でした。
■保護してわかった重篤な持病
静岡県の保護団体、スリール~犬達の幸せ探し~では、12月28日に保健所から引き出し、世話することにしました。
当初からるいくんの体調は明らかに悪そうで、呼吸をするのもやっとの状態です。12月30日、すでに休みに入っていた動物病院に頼み込んでを診てもらうと、「脚に悪性のがん腫瘍があり、そして、僧帽弁閉鎖不全症(ぞうぼうべんふぜんしょう)を患っている」という悲しい診断が下りました。
僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の中で血液が逆流する病気で、末期になれば肺水腫などを発症させ命を落とすこともあります。X線撮影では肺のあたりにモヤモヤしたものが映り込んでおり、肺に水が溜まる前兆のようにも見えました。
■元飼い主はどんな思いで新年を迎えているのか…
飼い主は本当にやむを得ない事情でるいくんを保健所に持ち込んだのでしょうか。そして、どんな気持ちで新年を迎えようとしているのでしょうか。
それを思うと、憤りのあまり涙が浮かぶ団体メンバーでしたが、飼い主を恨むよりも今はるいくんの体調改善が先決です。憤りを堪えて、獣医師の指導のもとるいくんに適切な医療ケアを行うことにしました。
るいくんは日々の投薬にも素直に応じ、少しずつ元気を取り戻してくれました。当初は持病の苦しさからか、飼い主に棄てられたトラウマからか、笑顔を見せることはありませんでいたが、後にお世話することになった預かりボランティアさんの家ではうれしそうな表情を浮かべるように。大好きなオモチャをくわえて歩き回ることもありました。
■元気になったところで里親募集を開始
るいくんは高齢でもあることから、持病と付き合いつつ、できるだけ体に負担のない余生を送ってもらうことにしました。
里親募集も開始。12歳という高齢、重篤な持病という事情から里親希望者さんとのマッチングのハードルは高いですが、期待を込めての募集でした。
■譲渡会の一週間後に異変が…
預かりボランティアさんの世話を受け、すっかり甘えん坊となり体もみるみる太ってくれたるいくん。日に日に元気になってくれたことから、保護から7カ月ほど経過した頃、団体主催の譲渡会に参加することが決まりました。
「ここで良縁があると良いな」と関係者全員願っていましたが、残念なことに「家族」は見つかりませんでした。そして、譲渡会の一週間ほど後に、るいくんの体に異変が起こりました。咳が止まらなくなり、あれだけ元気にしていたのについにはジッと固まり動かなくなってしまったのです。
急いで動物病院に連れていくと、るいくんの心臓が肥大し気管を圧迫していました。息がしにくくなり、その苦しさでるいくんは咳が止まらなくなっていたようでした。
■「本当の家族」との出会いを諦めず里親募集を続行
新たに処方された気管を広げる薬が効いたようで、るいくんは再び安定した生活を送れるようになりましたが、がん腫瘍や心臓病を考えれば、るいくんの寿命はそう長くないかもしれません。
それでも小さな体で必死に生きようするるいくんのために、団体は里親募集を継続しています。
たっぷりの愛情を注いでくれる「本当の家族」と出会い、天寿を全うするその日まで穏やかに過ごしてくれることを願ってやみません。
(まいどなニュース特約・松田 義人)