落とした財布やスマホは返ってくるニッポン でも泣いている子どもには無関心? タイ出身者が感じた“違和感”
外国出身で日本に住んでいる人に話を聞くと「日本のここが素晴らしい」や「日本のこういう所は残念」など、自身が感じているギャップを伝えてくれることがあります。実際に日本では当たり前でも海外の人から見たら、良くも悪くも意外なことがあるようです。
そんな海外の人が感じるギャップについて、タイ出身で現在は21カ国語対応の英会話カフェ&スクール「Petit Planet」でタイ語を教えているナリさんに話を聞きました。
ータイといえば「微笑みの国」といわれていますね
タイの人たちにとって「フレンドリー」であることが当たり前だからではないでしょうか。日本人の生徒さんがタイに働きに行った際、職場内の雰囲気が賑やかで驚いたと話してくれました。
確かにタイでは、新入社員はすぐにランチに誘われたり残業せずに早く帰るようにいわれたり、親切にされることが多いです。もちろんいじめもなく年齢や役職に関係なく全員がフレンドリーですね。
逆に日本の職場は私から見ると、堅苦しく感じることもあります。上下関係があり尊敬語を使うのが当たり前で、日本で働き始めた当初は言葉の使い分けに苦労しました。
ー街中の風景や人の様子に違いはありますか
日本では信号や横断歩道のルールをしっかり守っていてすごいと思います。タイでは信号や横断歩道を守る人はほとんどいません。もちろん日本でも信号などのルールを守らない人はいますが、割合がまったく違います。
タイでは車が来ていなければ信号に関係なく渡るのは当然で、車が来ていても渡る人がいるくらいです。そのため日本に来て信号を守っている人たちを見た時は、とても感動しました。
また日本の道路が清潔なのには驚きました。道沿いにゴミ箱がないにもかかわらず、道路にゴミがほとんど落ちていないのですから。タイでは道沿いにゴミ箱が設置されていますが、多くの人が使いません。ゴミ箱が近くにあっても、なぜか道端に捨てていく人が多いです。
ーでは日本のいいところはどこだと思いますか
先ほど話したルールを守る真面目さや道の清潔さだけでなく、治安の良さにとても感動しました。例えば私の友達がタイから来た時の話ですが、この友達はよく忘れ物をする人で、日本でもカフェや飲食店で食事をした後などで気付いたら「スマホがない」や「財布がない」と言って困っていました。
もしもタイで忘れ物や落とし物をした場合、確実に盗まれてしまいます。しかし日本はタイと全く違います。
スマホを落としたのに気が付いた時は、私が友人のスマホに電話してみたら預かっている人が電話に出てくれて、すぐにスマホを返してくれたのです。また落ちた財布を「落ちましたよ」といって教えてくれる人もいました。これらの親切はタイではほぼあり得ないので、ぜひ見習いたい部分です。
ー逆に日本に来て残念に感じたことはありますか?
買い物の時の交渉ですね。タイだと買い物をする際に値段の交渉をするのが当たり前です。この交渉をコミュニケーションのひとつとして楽しみ、客と店員が仲良くなります。日本では買い物の時に交渉することはほとんどなく、私が交渉していると困ったような不思議そうな顔をされてしまうので寂しいです。
また、困っている人がいても手を差し伸べない姿を見て残念に思うこともありました。ある時バス停で泣いている女の子がいたのですが、周りにいる人は声をかけたりしないのです。
私は彼女の横に座り「大丈夫?」と声をかけたりしたのですが、それでもほかの人は何かしようとはしませんでした。人それぞれに理由はあるとは思いますが、落とした財布やスマホは親切に返してくれる人がいる一方で、泣いている子どもを無視してしまう人もいることに少しがっかりしました。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)