「木」の下に「✕」…100年以上昔の戸籍でみつけた難読漢字の正体は? おそらく現在は使われていない“幻の異体字”

コミュニケーションや記録のために我々が日常的に使用する漢字。ご存知のとおり中国発祥で東アジア各国に伝播したものだが、歴史の中でその形はさまざまに変化している。今、SNS上で話題になっているのは100年以上前の日本で使用されていたある漢字の書き方。

「戸籍辿ってたら、まったく見たことのない漢字が出てきたんだけど何これ…………。」と件の漢字を紹介したのはにゃんだーすわんさん(@tadsan)。

「木」の下に「✕」を書いたこの漢字。現在、常用されているものにはこんな漢字は存在せず、いったいどう読めばいいのやら…にゃんだーすわんさんにお話を聞いた。

ーーこの字をご覧になった感想をあらためて。

にゃんだーすわん:学生の頃から漢字に関心があって調べていたので、略字については詳しくありませんでしたが、Unicodeに収録されていない字体の漢字が自分の先祖の戸籍から発見されたことは驚きでした。齋藤つめのは母方の祖母の祖母…私から見て4世代前の高祖母にあたり、明治20年(1887年)夕張郡登川村(現・夕張市)生まれのようです。1971年に84歳で亡くなっているので大往生だったと思います。

ーーこの字の正体は?

にゃんだーすわん:出身地の夕張市に従前戸籍を取り寄せましたところ、略字ではない「森」さんだったことは確定しています。本人が結婚前に略字の森を好んで使っていたかは戸籍の資料からは判断できません。

また、この漢字がUnicodeや戸籍統一文字に含まれていないことは判明していますが、ツイートの後に資料を2冊購入しまして、この字体がこの戸籍だけにに固有の文字ではなく実際に用いられたことがあるものだということは確認できました。

戸籍は手書きで管理されてきた文書なので、単純な誤字や役場の担当者の文字の書き癖が反映されてしまっていることが知られています。戸籍に特別な漢字が記載されていたからといってそれが正式な表記だとは限らず、戸籍に記載されていた漢字もつめのさんが自分で書いた表記かはよくわかりません。これは書籍の資料にあたってからわかったことなのですが、「森」の略字は過去の法務省通達の『誤字・俗字・正字一覧表』には記載されていました。平成の戸籍システム電算化を経てこのような戸籍に残る俗字や略字は一般的な字体に統合されていったようです。戸籍統一文字に収録されていないということは、生きている戸籍にはこの略字は修正されて残っておらず、本名としてこの漢字を使用している人は現存しない可能性がかなり高そうです。 

ーー投稿への反響について。

にゃんだーすわん:漢字の正体がわかったあとの反響としては、実際に名前の漢字の異体字・表記揺れに悩まされた人の声が漏れ聞こえてきました。私の場合は高祖母の旧姓としての記載だったので子孫の名字として受け継がれることはありませんでしたが、100年以上前の戸籍から漢字が「化ける」瞬間を捉えられたことは興味深く思いました。仄聞するに、戸籍や住民票に一般的ではない文字が含まれているとマイナンバーカードに含まれる代替文字によって期待通りのサービスが受けられない事例が散見されるようです。行政のデジタル化は国民全体の利益になるものと信じておりますので、このような漢字の字体差によって生活の不便が生じることがないように期待しています。

   ◇   ◇

SNSユーザー達から数々の驚きの声が寄せられた今回の投稿。みなさんの身近にも同じような事例はないだろうか。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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