まるで今の週刊コミック誌…江戸時代に描かれた絵草紙のポップさにSNS騒然 「タイムマシーンで現代の絵師が!?」「身近に感じる」
約200年前、江戸時代に描かれた絵草紙の画風がSNS上で大きな注目を集めている。
きっかけになったのは金魚絵師の深堀隆介さん(@RiusukeFukahori)が「これジャンプじゃないぞ!江戸時代の書物なんだぞ!」と投稿した1枚の写真。
餅かキノコのようなきのこのような顔をした謎の妖怪「人面」が、人間世界を闊歩する…。深堀さんが紹介したのは1827(文政10)年頃に斎藤月岑によって描かれた『人面草紙』という絵草紙。なんとも不思議な内容なのだが、そのデフォルメ感あふれる画風からは確かに現代の漫画に通じる要素を感じる。
深掘さんに話を聞いた。
ーーこの絵草紙は三次もののけミュージアム(広島県三次市、正式名は湯本豪一記念日本妖怪博物館)で目にされたとか。
深堀:同じ三次市内にある美術館で私が監修する展覧会の開幕式があったのですが、その際に三次もののけミュージアムの館長さんもおられ、三次もののけミュージアムにご招待していただきました。ミュージアムでは、館長さんご自身による解説付きで館内を案内していただき、とても楽しかったです。
ーー人面草紙の画風や構図をご覧になって。
深掘:ミュージアムの最初の方にこの本が展示されていたのですが、私は遠目に現代の週刊コミック雑誌が展示されているように見えていました。近づいて「江戸時代」の文字が見え、目を疑いました。「本当に江戸時代に描かれた本なのか?」としばらくその本をずっと眺めていました。本には現代人が描いたようなキャラクターが縦横無尽に駆け回っていて、何とも面白い画面構成になっており、現代の漫画に通じる表現に驚愕するとともに、江戸時代をとても身近に感じることができました。
ーー投稿への反響について。
深堀:何気なく載せたポストでしたが、次の日になってから徐々にバズり始め、気がつけば100万ビュー、200万ビューと上がっていきました。たくさんの人々がリポストしてくれて面白かったです。大抵は「マジか!」「すごい!」「タイムマシーンで現代の絵師が江戸時代に行って描いたんだ!」など驚いている人が多かったのですが、中には「フェイクだと思ってました。すみません!」など私のポスト自体を疑う人もいました。それくらいジャンプに見えたということでしょうね。
◇ ◇
今回の投稿に対し、SNSユーザー達からは
「凄い!ジャンプと江戸はそんなに遠くない!」
「磯部磯兵衛物語やん…」
「なにげに花魁がムニッてつねってるのが面白い」
「日本のサブカル文化 宇宙人の登場するラノベを1000年前に書いていたのはだてじゃない」
など数々の驚きの声が寄せられていた。人面草紙は比較的最近になって注目されるようになった作品。制作の背景や当時の評価はよくわかっていないようだが、200年前の絵画で現代の日本人にとってこれほどシンパシーを感じる作品は稀。今後のさらなる研究を待ちたい。
なお今回の話題を提供してくれた深堀さんは現在、各地で展覧会を開催中。奧田元宋・小由女美術館(広島県三次市)では監修した金魚アートの展覧会「金魚美抄2024」が、秋田県立美術館(秋田県秋田市)では個展「水面のゆらぎの中へ」が開催中なので、ご興味ある方はぜひ足を運んでいただきたい。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)