ホッキョクグマ長年のぺア「ホクト」「ユキ」あえて別れ、繋いだ命 それぞれの子が神戸、名古屋で大活躍 故郷・姫路から見守る関係者の思いは
プールで泳いだりエサ入りおもちゃを追いかけたりと元気いっぱいなホッキョクグマが神戸、名古屋の動物園で人気を集めています。姫路市立動物園で長年ペアだったオスとメスが別れ、移動先でそれぞれ新たなパートナーとの間に誕生した、まだ2歳、3歳の若い個体で、飼育数が29頭にまで減少した日本のホッキョクグマ界にとって明るい話題になっています。その陰には人気動物の不在を受け入れ、遠く離れても見守り続ける"故郷”の人々の思いがありました。
オスのホクト(2000年12月生)、メスのユキ(1999年11月生)は20年近くを共に暮らし、出産も数回ありましたが赤ちゃんはいずれも数日の命でした。日本動物園水族館協会から、新たな環境で繁殖にチャレンジをとの要請を受け、それぞれ新天地へ。
2019年3月、ユキが秋田県の男鹿水族館GAOへ移動し、オスの豪太との間に2020年12月、オス1頭を出産しました。ホクトも2020年6月に北海道の旭川市旭山動物園へ移動。メスのピリカとの間に2021年12月、メスの赤ちゃんを授かりました。現在、ユキの子「フブキ」は名古屋市の東山動植物園、ホクトの子「ゆめ」は神戸市立王子動物園で元気いっぱいに過ごしています。
■故郷・姫路市立動物園の思い
姫路市立動物園の大川毅・副園長に聞きました。
ーホクト、ユキがそれぞれ繁殖に成功しました
「子どもたちも順調に成長し、日々立派な体つきになっていることに驚くばかりです。ホッキョクグマたちの活躍は園のみんなが確認しています。今ではたくさんの動画を見ることができるので、皆でその成長ぶりを喜んでいます」
ー姫路市立動物園にとってどんな存在?
「当時担当していた飼育員は、『夏の風物詩である氷プレゼントの時の嬉しそうな姿、プールで気持ちよさそうに泳ぐ姿を今でも思い出します。本当に2頭ともかわいくて飼育員からも愛される存在でした』と振り返っていました」
ー人気者でした
「送り出す会では多くの市民の方から見送っていただいたと。今も『ホッキョクグマは元気にしてる?』『この前ホクトに会いに行ってきました』など窓口でお話してくださる方もおられ、本当に人気者だったと感じています」
ユキは24歳になり繁殖の舞台から引退。2024年3月、浜松市動物園へ移動し、のんびり過ごしています。代わりに同園から9歳のメスが男鹿水族館へ移動しました。
ホクトは一時期、札幌市円山動物園で新たな繁殖に挑戦。今は旭川市旭山動物園へ戻り、ピリカとの次の繁殖が期待されています。
姫路市立動物園では他園へ移動した動物たちの近況をホームページに掲載。その中で、国内のホッキョクグマ飼育数は1999年の58頭をピークに減り続けていることや、ホクト、ユキ、フブキが姫路市の所有であることなどを紹介。獣舎整備などが難しく今後ホッキョクグマを戻すことはできないことにも触れました。
それぞれが親になり、ユキは姫路を含めると3回目の出産でした。「ユキが母親として立派に子育てをしてくれたことを大変うれしく思っています」と大川副園長。「ホッキョクグマたちを元気に育ててくれている各園館関係者さま、応援してくださるファンの皆さまに感謝しています」と話してくれました。
(まいどなニュース特約・茶良野 くま子)