ロキソニンやカロナールには副作用がある!? 医薬品メーカーの見解は?「公式の情報を確認して」
SNSで解熱鎮痛薬「ロキソニン」「カロナール」に関する投稿が注目されました。市販で手軽に手に入る薬ですが、副作用もあるので、使用するには注意が必要とあらためて訴える内容に多くの人が反応。
両薬のOTC医薬品(市販薬)である「ロキソニン解熱鎮痛薬シリーズ」、「カロナールA」を取り扱う第一三共ヘルスケア株式会社を取材しました。担当者に両薬の特徴や使用上の注意点などを聞くとともに、昨今のネットの情報に対する見解や、正しく薬を使ううえで大切な心構えについても、見解をいただきました。
■用法・用量を守り、副作用が起こりにくい服用・薬選びを
「お薬の服用状況や服用される方の既往歴や体質などさまざまな要因がありますので、一概にすべての方に副作用が生じるということではありません。解熱鎮痛薬をはじめ、医薬品の多くはその主作用と同時に何らかの副作用が発現する可能性が少なからず存在しています」(第一三共ヘルスケア・担当者)
「ロキソニンS」や「カロナールA」のような市販薬は、一般の方が自分の判断で使用されることに適した形態で販売されています。しかし、誤った使い方をすると、副作用のリスクを高めてしまいます。「個装箱や添付文書の内容をよく読み、用法・用量を守って適切に服用すること」が大切です。また、多くの市販薬は処方薬と異なり、短期間の服用となるよう定められているため、そのような薬の長期服用は控えるよう注意が必要です。
また、先に紹介したSNSの投稿では、ロキソニンの胃への負担に関する指摘もありました。
実際、ロキソニンのようなNSAIDs(Nonsteroidal anti-inflammatory drugs;非ステロイド性抗炎症薬)は、痛みの原因物質である“プロスタグランジン”の産生を抑制することで、鎮痛効果を発揮しますが、プロスタグランジンには胃を酸から守るはたらきもあるため、その産生が抑えられると胃に負担がかかってしまうといわれています。
しかし、担当者はこのようにも話します。
「ロキソニンの主成分“ロキソプロフェンナトリウム水和物”は、『プロドラッグ』(成分が体内で活性型に変化し、効果を発揮する製剤)であり、肝臓で代謝されてはじめて効果を発揮します。胃を通過するときには薬効を示さないことで、胃への負担が少なくなるよう工夫されています」
さらに担当者は、胃への負担を低減するために、空腹時を避けて服用することも大切だといいます。しっかりした食事でなくても、クッキー1枚を事前に食べておいたり、水を多めに飲んだりしてから服用すると良いとのこと。カロナールAも同様です。
また、ロキソニンについては、胃にやさしい成分を配合した「ロキソニンSプラス」、胃を保護する成分が配合された「ロキソニンSクイック」「ロキソニンSプレミアム」「ロキソニンSプレミアムファイン」も販売されています。より胃の負担を軽減させたい方は、そちらを検討するのも良いでしょう。
「過度に副作用を恐れて痛みを我慢してしまうと、脳が痛みに過敏になってしまったり、正しくお薬の効果を感じにくくなってしまう場合もあります。上手に市販薬を取り入れ、日常生活をより快適に送っていただくためにも、お薬のはたらきや副作用をよく理解いただき、適切な頼り方を知っていただくことが重要です」(担当者)
もちろん、辛いからといって定められた用量よりも多い量を服用したり、服用間隔を狭めたり、長期服用に及んだりするのは厳禁。1ヶ月に10日を超えて鎮痛薬を服用しなければいけないほど頻繁に痛みがある場合や、適切に服用しているにもかかわらず症状が改善しない場合、今までに経験したことのないような痛みがある場合は、直ちに服用を中止して、医師や薬剤師などの専門家に相談することが大切です。
■市販薬・処方薬の区別にも注意
また、市販薬・処方薬の違いによっても、気をつけるべきポイントは異なるといいます。
「処方薬と市販薬では、全く同じ成分・分量であっても、国に認められた効能・効果や適応年齢、服用可能量が一部異なるものがあります。病院では一人一人の年齢・体格・体質・既往歴などを考慮して医師の判断のもと処方されますが、市販薬では、すべての人が自己判断で一律に服用できる必要があるため、服用期間を含めて異なっています」(担当者)
ロキソニンを例に挙げると、同社で販売しているロキソニン解熱鎮痛薬シリーズは、処方薬と同じ成分・分量を配合した単味剤の「ロキソニンS」のほか、頭痛への効きめを考えた「ロキソニンSプレミアム」や、生理痛のメカニズムを考えてつくられた「ロキソニンSプレミアムファイン」など、生活者のニーズに合わせて補助成分を追加配合した製品を含む計5種類が販売されています。
一方で、処方薬は単味(有効成分が1種類)であることが多く、医師がその患者の症状に合わせて、複数の単味剤を処方しているといいます。
またカロナールは、病院などでは用量を調整して小児にも処方される場合があるといいます。しかし、同社が発売している市販薬の「カロナールA」は、処方薬と同じ有効成分アセトアミノフェンが使用されているのにもかかわらず、小児は服用できません。これは、厚生労働省の制定するOTC医薬品(市販薬)の解熱鎮痛薬承認基準により、カロナールAのように1錠あたりアセトアミノフェンを300mg含む製剤の服用可能年齢が、15歳以上と定められているためです。
このように、同種・同成分の製剤であったとしても、市販薬・処方薬によってその使用のされ方や性質、服用できる年齢などが異なる場合があります。
使用前には、医師や専門家の指示に従ったり、注意書きを読んだりして、正しく使うよう努めることが肝要です。
■ネット・SNSの情報を鵜呑みにせず、詳しくは公式を参考に
さらに、第一三共ヘルスケアの担当者は、近年SNSなどネット上で、薬に関する情報が多く出回っている状況についても、見解を話しました。
「(薬に関する)副作用情報や製品についての正しい知識は、添付文書(説明文書)やブランドサイト等に掲載しておりますので、不安に思われることがある場合はそちらをご確認ください」
ネットの情報を鵜呑みにするのは良くないとのこと。
もちろん、SNS等の情報のなかにも、投稿者が本当に「有益で正しい知識を伝えたい」という思いで発信されたものはあるでしょう。しかし、一方で誤った情報も多いのが実情です。また、薬の効き方や副作用の程度には個人差があり、市販薬・処方薬など、種類によっても使い方が異なる場合があります。
メーカーが公式に発信している情報を確認することが、薬の適正使用やより効果的な使用につながるといえるでしょう。
なお、第一三共ヘルスケアでは、痛みや解熱鎮痛薬の情報を正しく知っていただくためのコンテンツ『ウソ?ホント?痛みと鎮痛薬の都市伝説』を発信しています。
かかりつけの医師や、歯科医師や薬剤師など、専門家に相談するのも有効です。
◇ ◇
現代は、ネットでさまざまな情報が手に入る便利な時代になりました。
そのなかには、もちろん有益なものもありますが、一方で誤った情報・不十分な情報が多いのも事実。特に医療や薬といった、自身の体調や健康に関わるような内容のものは、ネットの書き込みをそのまま信用してしまうのは危険です。
そのような書き込みを見るとしても、あくまでも知識を得るためのきっかけづくりや参考程度に止め、詳細な情報はメーカーが公式に発信している情報などから得るようにしましょう。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))