混雑する新幹線…親子連れから「その席を譲ってください」とお願いされたら? 自由席と指定席で異なる“事情”
新幹線に乗車していて、見ず知らずの親子連れから「その席を譲ってくれませんか」と頼まれたら、どう対応するのがベストなのか判断に迷う。自由席に座っているときと指定席に座っているときとでは、対応の仕方に少し違いがあるようだ。JR西日本に聞いた。
■自由席が安く買えるのは座れる保証をしないから
友人と2人で旅費を節約するため、敢えて自由席の切符を取った。乗車前には早くからホームへ上がって行列に並んだ甲斐もあり、席を確保することができた。周りは満席で、立っている人もいる。
発車してしばらく経った頃、子どもを連れたお母さんがやって来て、こう声をかけられた。
「その席を譲っていただけませんか」
時折、SNSに「こんなときどうする?」と投稿される状況だ。
子ども連れだし、善意で譲ってあげたいが……。それは、はたして正しい選択なのか。また、同じくSNSで「同じ料金を払っているのに、座れる人と座れない人がいるのは不公平ではないか」という疑問が話題にのぼる。
そもそも自由席券は、席に座れることを保証しない。座席を指定しないので、指定席特急料金から座席指定料金の相当額を減額して、安価な価格設定をしている。だから着席は先着順だし、座らないという選択もできる。座って乗車しても立って乗車しても、客の自由なのだ。
つまり、いったん着席したら下車するまで座っていなければならないことはなく、譲っても差し支えない。
■指定席を譲ってほしいと頼まれたら?
以上はお互いがもっている切符が自由席どうしの場合だが、自分が指定席だと少し事情が違ってくる。
今はネット予約が多いけれど、みどりの窓口に並んで切符を購入する人もいる。窓口に並んだ末に手に入れた指定席券を、乗車後に「譲ってください」と頼まれたら、どう対応するべきだろうか。
JRでは原則として、1歳未満の「乳児」と1歳以上6歳未満の「幼児」は、乗車料金と特急料金は不要となっている。たとえば6歳に満たない子供を連れて自由席券で乗車しているということは、切符は親の分しかもっていないことになる。
この場合、6歳未満の子供を座らせる座席が必要になるから小児の運賃と指定席料金が必要になるという。運送約款では以下の通り規定されている。
◇ ◇
▽旅客営業規則(運送約款)第73条(旅客の区分及びその旅客運賃・料金)
旅客運賃、急行料金又は座席指定料金は、次に掲げる年齢別の旅客の区分によって、この規則の定めるところにより、その旅客運賃・料金を収受する。
大人 12才以上の者
小児 6才以上12才未満の者
幼児 1才以上6才未満の者
乳児 1才未満の者
2 前項の規定による幼児又は乳児であっても、次の各号の1に該当する場合は、これを小児とみなし、旅客運賃・料金を収受する。
・ 幼児が幼児だけで旅行するとき。
・ 幼児が、乗車券を所持する6才以上の旅客(団体旅客を除く)に2人を超えて随伴されて旅行するとき。ただし、2人を超えた者だけ小児とみなす。
・ 幼児が、団体旅客として旅行するとき又は団体旅客に随伴されて旅行するとき。
・ 幼児又は乳児が、指定を行う座席又は寝台を幼児又は乳児だけで使用して旅行するとき。
・ 幼児又は乳児が、第140条の2の規定により当社が確保した座席を使用して旅行するとき。
◇ ◇
「指定席に限らず基本的に切符は購入いただいたお客様(代理購入可能)と運送契約を締結するため、譲渡は認めていません」
切符を購入することは、鉄道会社の運送約款に同意して運送等の契約を結ぶということ。その契約は、切符を購入したときに成立するとされている。しかしながら「お客様の善意や思いやりのある行動を妨げることはありません」ともいう。乗客どうしのトラブルを招かないために「係員にお声かけをいただき、座席の確保をいただきますようお願いいたします。なお、車内では座席が確保できない場合がありますので、乗車前に必要な座席の確保をお願いいたします」とのことだった。
たんに切符を買って乗車するだけの行為にも、さまざまな規則が存在する。もしも「席を譲ってください」としつこく迫られたときは、自分で判断せず、乗務員に助けを求めるのがベストな選択のようだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)