「飼い主さんはどこ?」 悲しみをたたえた瞳のトイプードル 保護から2カ月初めて見せてくれた「笑顔」

初めて見る人間を前に警戒心を抱き、固まりながら震えて見つめるメスのトイプードル・セレナ。何らかの事情で飼い主と離れてしまい、動物愛護センターに収容されました。

時折見せる不安そうな表情からは「飼い主さんはどこにいるんだろう」「こんなところにいて飼い主さんに心配かけていないかな」「早く迎えに来てくれないかな」と思っているように映り、胸が締め付けられそうになります。

■目を潤ませながら先住犬が遊ぶ様子を見ていた

心に負った傷や不安は計り知れませんが、過去を忘れるくらいの幸せにつなげるべく、保護団体、restartdog LIENが保護。団体と提携する預かりボランティアさんの家でお世話を受けることになりました。

しかし、この家に来てもセレナの様子はなかなか変わりません。先住犬たちが楽しく遊ぶ横で、その様子を見る日々が流れました。先住犬たちが遊び疲れて寝たところで、恐る恐るケージの外に出てきて部屋中を少しずつ探検。

繊細な性格の持ち主で、打ち解けてくれるまで相当な時間がかかると思われました。

■玄関先まで不安げについてきた

保護から数日、セレナの様子は全く変わりませんでした。

セレナがこの家に来てから初めて預かりボランティアさんが外出した際、「ママさん、どこに行かれるんでしょうか」「まさか私を置いていくんじゃないでしょうか」とばかりに玄関先までくっついてきました。

預かりボランティアさんが「大丈夫大丈夫!すぐ帰ってくるからお家の中で待っていてね。自由に過ごして良いんだよ」と声をかけると、安心したのか、それともやっぱり不安なのか、無表情のままジッと見つめていました。

■保護から約2カ月後の散歩で初めて見せた笑顔

セレナのなかなか解けない悲壮感は、見ているだけ人間の心も悲しくさせるものでしたが、それでも預かりボランティアさんは努めて明るく接し続けました。

保護から約2カ月が経過したある日、散歩中のセレナが初めて笑顔を見せてくれました。

普段のセレナを知っている人間からすると、まるで別犬。セレナがうれしそうにピョンピョン飛び跳ねる様子を前に、他のワンコが一瞬固まってしまうほどでした。

しかし、セレナが初めて見せてくれた笑顔は、ここまでお世話し続けた預かりボランティアさんにとって、何よりも嬉しいプレゼントでもありました。

この日を境にセレナは「本当の自分」を出せるようになり、ときに家のものをかじったりイタズラしてしまうことも。でも、あの悲しい表情を浮かべていたことを思えば、こんなイタズラさえも嬉しく思います。

セレナの笑顔を浮かべる時間が増えて、ゆくゆくは「本当の家族」と出会えると良いですね。セレナにとって、いっさいの不安のない第二の犬生がいつか訪れますように。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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