180匹もの多頭飼育崩壊現場 レスキューされたポメラニアンは心身に深い傷 新しい飼い主さんの優しさが心の氷を溶かしてくれた
後を絶たない多頭飼育崩壊。2024年、埼玉県の繁殖場で180匹にも及ぶ多頭飼育崩壊が発生。繁殖場のブリーダーは180匹のうち小型犬3匹を袋に入れて殺害したなどとし、6月に逮捕されました。
ブリーダーは「繁殖に使えなくなった犬を生かすと経費がかかる。行き場のない犬の責任を取るつもりで殺した」と話しましたが、なんという無慈悲で身勝手な言い分でしょう。
■初めての人間を前にジッと固まり怯えていた
この繁殖場のニュースは報道され、多くの保護団体が垣根を越えて協力し、残されたワンコたちの保護に乗り出しました。
保護団体・restartdog LIENも動物愛護センターなどを介し、この地にいた複数を保護。そのうちの1匹がメスのポメラニアンのこのはでした。
団体提携の預かりボランティアさんの家に迎えられても、なかなか心を開かず、常にソワソワ。かろうじて散歩には行けるものの、日中や人通りが多いところはダメ。初めて会う人間を前にすると、ジッと固まりおびえてしまいます。
■里親希望者さんの思いや縁を察知?
その様子は、ブリーダーから受けた仕打ちがトラウマになっているようにも映り、胸が苦しくなります。このははしばらくの間、夜間で人もクルマも通らないところでしか散歩ができませんでした。
日々の生活で預かりボランティアさんとは少しずつ心を通わせるようになったものの、やはり知らない人が目の前に現れると硬直。心の傷はあまりに深いように映りました。
そんな中、このはの存在を知った里親希望者さんが現れました。先住犬のいる温かい家族で、心の傷も含めて、「全てを迎え入れてあげたい」と言ってくれました。
「まずはトライアルを」と里親希望者さんとこのはは初めてのご対面。またもガチガチに固まるこのはを誰もが想像していましたが、なぜか、里親希望者さんの前では怖がることなく、心を開きました。
このは自身が、里親希望者さんの思いを受け止めているようにも見えました。その後のトライアル期間中も、不安そうな表情を一切見せず、元々この家で過ごしていたかのようにリラックス。テーブルの下では里親希望者さん家族の足元でウトウト眠ってしまうほどでした。
後にこのはは正式譲渡。あの劣悪な多頭飼育現場とは真逆の、いつも安心して過ごせる「お家」をつかみました。
■今なお残る多頭飼育崩壊現場のワンコたち
このはが幸せをつかんでくれて本当に良かったのですが、あの多頭飼育崩壊現場には今も保護されぬままのワンコが複数残っているようです。
1匹ずつ等しく尊い命です。残されているワンコ全てが、必ずやこのはのような幸せを掴んでくれることを祈ってやみません。
(まいどなニュース特約・松田 義人)