散歩はゆっくり亀の歩み 抱っこはイヤで「ガブッ」 おばあちゃんパピヨンが幸せをつかむまで
埼玉県動物愛護センターの片隅でボロボロの体のメスのパピヨンが人間に笑顔を振りまいていました。おそらくは10歳をとうに超えたハイシニアで名前は「ハッピー」。屈託のない笑顔を前に、センター職員は少し微妙な表情を浮かべていました。
■抱っこしようとすれば「必ず噛みつく」
聞けば、ハッピーを抱っこしようとすれば「必ず噛みつく」とのこと。甘噛みかと思いきや「ガッツリ噛みつく」そうで、そして気分によってはずっと吠え続けることもあると言います。
しかし、ハイシニアになるまで生き抜いたハッピー。センターを「最後の場所」とさせるわけにはいきません。保護団体・restartdog LIENではハッピーを引き出すことにし、お世話をしながら幸せな余生に繋いであげられることを目指しました。
■呼び続けるのは元飼い主か、産んだ我が子か
団体提携の預かりボランティアさんの家にやってきたハッピーは、センターでの笑顔から一転。職員から聞いていたとおり、ずっと吠え続けました。
人間や他のワンコがいようがいまいがお構いなし。しかし、その鳴き声は何かを呼び続けるようにも見えます。元飼い主を呼んでいるのか、産んだ我が子を呼んでいるのか……鳴き続けるハッピーの姿を前に、胸が苦しくなります。
■ハッピーがもう一度人間を信じ始めてくれた
ハイシニアでもあることから、ハッピーの動きは鈍く、散歩はゆっくり亀の歩み。それでもハッピー自身は散歩が大好きな様子で、この間は鳴き叫ぶようなことはなく、いつもルンルンの笑顔です。
しばらくして、ハイシニアで両目とも白濁し、耳は遠い様子。さらに保護中に子宮蓄膿症となり手術を実施しましたが、この間に鳴き叫ぶ様子を見せなくなり、落ち着いて過ごす時間が増えていきました。
■ハイシニアにして出会うことができた「本当の家族」
そんなハッピーの元に「ずっと寄り添い続けたい」という里親希望者さんが現れました。相変わらず抱っこだけは苦手なハッピーですが、里親希望者さんとはすぐに打ち解け、後に正式譲渡。
ハイシニアにしてハッピーは「本当の家族」と巡り会うことができ、今は優しい里親さんの元で、穏やかに幸せに過ごしているようです。いつか苦手な抱っこを克服し、さらに里親さんに甘えられるようになると良いですね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)